夏とプールと日焼け止め(2)
「どう? お兄ちゃん」
「な、何でシャツを脱いで来ちゃったんだよー」
俺は反射的に顔をそらしてしまったが、本来なら、この件に関しては俺の反応の方が異常だろう。
だって、俺の目の前にいるミオは男の子だから、上半身が裸でも何らおかしくないし、恥じらうような行動でもない。
それでも、一度でもミオの中にある〝女の子らしさ〟を意識してしまったら、その裸体を直視するのは、何だかやらしい事をしているような気がしなくもないのだ。
だから目をそらしてしまうのである。
そもそも男の子の裸を〝裸体〟だと表現してしまっている事が、すでにやらしい目で見ているフシがある。
「お兄ちゃん、どしたの?」
「いや、シャツ着たままでよかったじゃん」
「だってぇ、シャツじゃなくて水着を見て欲しいんだもん」
なるほど、至極もっともな意見だ。
ミオは、学校指定の水着に着替えたその姿を、いち早く俺に見て欲しくてそうしたのだろう。
だったら、そこにシャツが存在する意味は無い。
よって、このシチュエーションで俺がミオの裸を見るというのは、何らやらしい事のない、極めて正当な行為なのだ。
と、自分に強く言い聞かせて、俺はミオの着ている水着へと目を向けた。
「あれ。意外と丈が長い水着なんだね」
「そうなんだよー。これじゃ、変な日焼けしそうだなぁって思って」
ミオが着て見せてくれた紺色の水泳パンツは、膝上が十センチくらいの、いわゆる五分丈に近いものだった。
競泳水着のようにピチピチなわけではなく、多少の隙間というか猶予があるため、締め付けがきついという心配は無いだろう。
ウエストのサイズ調整に腰ゴムを採用してあるが、それでも大きすぎるという子のために、調整用の
ミオがその紐を結んでいたのは、少しゆったりめなサイズだったからだと思われる。
うん、いたって普通のスクール水着といった感じだ。
俺が子供のころはもっと丈が短く、ぴっちりとした半ズボンのようなタイプの水着を穿かされたものだが、これも時代の流れかな。
という俺の昔話はともかくとして、ミオがさっき心配していた「変な日焼け」とは、その水着より下だけが日焼けしてしまう事だろう。
ミオは普段、パンティーラインがかなり鋭角な女の子もののショーツを穿いているのは、この間見せてもらった通りだ。
そのショーツの上に、通学用の普段着として、丈が短いショートパンツを好んで着用している。
そのショートパンツから下が日焼けするならまだ自然なのだが、五分丈のスクール水着を着たまま日焼けをすると、着替えた時に、焼けていない部分が謎の絶対領域になるのだ。
ミオはそれを心配しているのである。
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