ショタっ娘と妊娠(2)

 クラスメートの女の子とそんなに違うようには見えない。ミオがそう思うのは、まぁ無理からぬ話である。


 ミオの顔は美少女かと思うくらいかわいいし、声変わりもまだ迎えておらず、おまけに体も華奢きゃしゃで小さい。


 それだけならまだしも、普段の仕草や立ち振舞いまでもが女の子のようなのだから、見ている方はますます混乱するだろう。


 立てば芍薬しゃくやく、座れば牡丹ぼたん、歩く姿は百合ゆりの花。


 ミオはそんな故事のことわざが似合う、可憐なショタっ娘なのである。


 極めつけは、の位置に全く違いが見られない事だ。


 例えば、とあるかわいい子がか女の子なのかの判別がつかない場合、最終手段として、くびれとおヘソの位置に注目する。


 おヘソがくびれと同じ高さにあるのが男で、くびれの下にあるのが女の子だ。


 ただ、まだ発育しきっていないミオの場合は、全くと言っていいほど女の子と同じ体型をしているので、その判別方法が役に立たないのである。


 この年ごろなら、まだ胸が膨らみかけてもいない女の子だってザラにいるだろうし。


 よって、普段からユニセックスな服を着ているミオの性別を、外見だけで判断するのはほぼ不可能に等しい。


 実際、喫茶店のおばあさんも、海釣り公園のおばさんも、散髪を担当した理容師さんも、ウサちゃんパークの飼育員さんでさえも、ミオを女の子だと思い込んでいたのだから。


 ……一応、最終手段が通じなかった場合、か否かを見て判別するという奥の手があるのだが、そんな下品で野暮な事を、俺の口からは説明できない。


 さっきまで聞かれていたのは、〝なぜ女の人だけがお腹の中に赤ちゃんを宿すのか〟という事であって、それ以外の事を進んでしゃべる必要はないだろう。


 というか、男女の性差くらいは、児童養護施設にいた時に教わっているものだとばかり思っていたが、案外遅れているんだな。


「ねぇ、もっとお話聞いてもいい?」


「いいよ。何かな?」


「赤ちゃんって、どうやったらできるの?」


 やっぱりその質問が来たか!


 一応、赤ちゃんができるのは女の人だけだ、という亊は理解したようだが、では〝なぜ赤ちゃんができるのか〟という原理に関しての謎は解けていない。


 だからこういう質問が飛んでくるのだ。


 これ、どうやって説明すればいいんだろう?


 俺が子供のころは、お袋に「大人の男女がキスをしたら赤ちゃんができる」と教えられたものだが、その手は今でも通じるのかなぁ。


 たぶん無理だな、キスが一体、女性のお腹にどう影響をもたらすのかを聞かれたら、俺はきっと答えに窮するだろう。


 男の口から赤ちゃんを送り込むんだよ、なんてホラー映画のような説明をしたら、多感な時期の子供はトラウマを抱きかねない。


 しかし、ここで納得のいく説明をしておかないと、好奇心旺盛なミオは、方々ほうぼうでいろんな人に質問をするおそれがある。


 もしも、その質問をされた相手が怪しい奴だったら、卑猥な言葉を吹き込まれたり、ミオに手を出したりする危険性もある。


 それだけは、何としてでも避けなければならない。


 ここまで来たら仕方がない。俺も腹を決めて、極限まで表現をぼやかして説明してあげようじゃないか。

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