初めての魚釣り(1)
早朝の恋バナが終わり、俺はいつものように朝食を作り始めた。
今日は土曜日。俺が勤める会社もミオの通う小学校も休みだ。
ご飯を食べた後は、何をしようかな。
放送されているテレビ番組の話題でおしゃべりをしながらぐうたらと過ごすか、はたまたどこかへ出かけるか……。
今日はいい天気だし、外でぽかぽかとした陽気を浴びながら遊ぶのもいいかも知れない。
などと思案を
その番組は、毎週土曜日の早朝に、三十分だけやっている超ローカル番組だ。
わずか三十分の間に、地元の各釣り場で狙った魚を釣り上げる瞬間のダイジェストや、先週はどこで何が釣れたか、という
在京のキー局がやっている、有名なマグロ漁師の人生ドラマだとか、有名タレントが参加してサバイバルの糧として魚を釣る番組なんかとは違って、こちらは地味だし華が無い事この上ない。
ないのだが、ミオ本人は、この放送を興味しんしんといった感じで見ていた。
「ミオ、その番組好きなの?」
俺は料理の手を止めて聞いてみた。
「ん? なーに?」
「えーと、今やってるテレビ放送の事」
「んとね、いろんなお魚さんを釣れるのが面白くて、ずっと見ちゃうの」
「そうかぁ、ミオは魚釣りが好きなんだね」
「うん。だーい好き」
ミオはニコニコしながら答えた。
うーん。そんなに興味があるなら、一度、本物の魚釣りを体験させてあげようかなぁ。
いきなりキャッチ・アンド・イートや大物狙いが目的じゃなくてもいいから、最初は遊びとして、お手軽に魚を釣らせてあげたい。
それをきっかけにもっと魚釣りが好きになれば、見るだけじゃなくて、自ら釣りに行く事が趣味になって、同じ釣り好きな学校の友達とも話が盛り上がるかも知れないわけだし。
よし。そうと決まったら、今日の予定に魚釣りを提案してみるかな。
「ミオ。今日はお出かけしようか」
「うん、お出かけするー。今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「海釣り公園に行こうと思うんだけど、どうかな」
「海釣り公園?」
「そう。海がすぐそこにある公園のことだよ。そこで一緒に魚釣りをしようかと思ってさ」
「魚釣り! 行く行くー」
ミオの大きな瞳がキラキラと輝いた。
ついさっきまで放送され、それを食い入るように見ていた、憧れの魚釣りを自身で体験できることが余程嬉しいらしい。
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