ほろ苦い失恋話(1)

「ごめんなさい。私、柚月ゆづきくんの事そういう目で見てないから」


 大ショック! 初めての告白で、勇気を振り絞ったのにー。


「柚月さん、いい人だとは思ってるけど、そこまでだから。このままお友達でいましょ」


 男をフるのに使う〝いい人〟って、男を傷つけない魔法のフレーズだよなぁ。


義弘よしひろ、もう少し上手だと思ってたけど残念だわ」


 これはもう致命的だよ。だって、男としてダメな奴だって言われてるようなもんなんだから。


「……ちゃん、お兄ちゃん!」


「う、うーん……許してくれぇ、どうせダメなんだよ俺なんて」


「もう! 何言ってるの?」


 さっきから、誰かが俺の体を揺さぶっているようだ。


 誰だか知らないが、放っておいてくれ。俺はこのまま殻に閉じこもっていたいんだよ。


「お兄ちゃん! 起きてぇー」


「んがっ!?」


 突然何かが俺の体の上に乗っかってきたので、その重さと衝撃にびっくりして目が開く。


 その〝何か〟の正体は爽やかなブルーのショートヘアを持つ美少女、ではなく、男の子だった。


「ミオ……?」


「よかったぁ、やっと起きたんだね」


 ミオはホッとした表情で、俺の胸に頬をすり寄せた。


 どうやら俺は、深い眠りについている間に嫌な夢を見て、相当うなされていたらしい。


 その様子を見て心配したミオが、何とかして俺を起こそうと奮闘してくれていたようだ。


 だが何度揺さぶっても奇妙な寝言しか言わないので、結局、俺の体に全体重をかけるように乗っかって、起こす事にしたのだという。


 その作戦が功を奏し、俺はようやく夢の世界から現実に引き戻されたのだった。


「大丈夫? お兄ちゃん。ずっとうんうん唸ってたからすごく心配したんだよ」


 俺の体にまたがっていたミオが、体を起こした俺の横にちょこんと座った。


「ご、ごめんごめん。ちょっと嫌な夢を見ていたみたいでさ」


「嫌な夢?」


「うん。昔の事を夢で思い出しちゃってね」


「昔の事ってどんな事?」


 まぁ当然興味を持つよな。


 ミオには俺の過去について結構喋った方だと思うが、うなされるほどの夢を見るくらい苦い経験をした事に関しては、全く話をしていなかった。


 今、この場で隠し事をしてもミオが不信感を募らせるかも知れないし、最初に言われたあの件だけは話してあげようか。

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