ミオの下着(3)

「それ、ひょっとして女の子ものの下着じゃないのか?」


「そうなの? これ、園長先生に買ってもらったんだよ。確か〝ショーツ〟って言うんだよね」


 ショーツって確か、女の子が穿く下着のカテゴリーじゃなかったっけ。


 ショーツはもともと丈の短いズボンのことを指すファッション用語だったはずだが、近年では、今この子が穿いている下着も、日本ではショーツにカテゴライズされるのである。


 主に女の子用のそれとして。


 俺はファッション関係には全く明るくないが、そのくらいの事は何となく理解している。


「お兄ちゃん、洗濯ものを干す時にこのショーツを見てたんじゃないの?」


「そういえばそうだっけかな。はは……」


 言われてみれば、なるほど、確かにそういう色の下着をいくつか干した記憶はある。


 が、俺の干し方は一般的な主婦のそれとは違って至極適当なものであったし、ミオの下着を一枚ずつ畳む際に、そのディテールをまじまじとチェックするほど俺は変態ではない。


 だからこそ、今穿いているそれがよもや、女の子ものの下着だとは夢にも思わなかったのである。


「ね、どうかな。似合ってる?」


 ミオはそう言って、その場で体をくるりとひるがえしてみせる。


 今度は、少ない面積のショーツに収まりきれないお尻が目に飛び込み、俺はドキッとした。


 ヤバい、色っぽすぎる。


 俺の目の前いるのはまごうことなき男の子なのに、あろうことか、俺はミオの後ろ姿に色気を感じてしまったのだ。


 色気を感じたということは、ミオの問いである〝似合っているか否か〟への答えはもうイエスでしかない。


「うん。すごく……かわいいよ」


「うふっ、ありがと」


 ミオがもう一度体を翻して、にっこりと微笑んでみせた。

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