空戦のスタディ
前河涼介
対日戦に参加したソ連の戦闘機部隊一覧
「空戦」〈ACT.4 疾風勁草〉(https://kakuyomu.jp/works/1177354054888422454/episodes/1177354054890584060)のために調べたもののまとめです。1945年8月の対日参戦に加わった戦闘機装備部隊の一覧です。よってそれ以前、以降に極東に配備された部隊の情報は載せていません。ウィキペディアロシア語版の各連隊ページから対日戦時の情報を抜き出しただけです。特に注釈のないところは全てウィキペディア情報です。とはいえ総勢1000機を超える大戦力。襲撃機部隊、爆撃機部隊、偵察機部隊もあるのですがさすがに手に負えませんでした。
情報のある部隊については任務や戦果の内訳を簡潔に載せています。これを見ると味方地上部隊の掩護(近接航空支援?)と敵地上部隊攻撃(襲撃)、そして偵察任務が多く、日本側の空軍戦力と交戦することはかなり稀だったと思われます。損失も離着陸時の転覆など、非戦闘によるものが多くなっています。
戦闘機部隊の因数について、1943年以降のソ連戦闘機部隊は4(2+2)機を1組=ズヴェノとした運用を行っており、12機で1個飛行隊(эскадрилья)、3個飛行隊に司令機ズヴェノを加えて40機で1個飛行連隊を構成していました。ただ各部隊の装備機を見ると50機前後の部隊もあり、予備機が豊富にあったことが窺えます。
装備についてはやはりYak-9系が多く、La-5/La-7が次ぎ、P-63とYak-3が同数くらいでしょうか。首位と次点の差は生産数の差を如実に反映しているような気がします。たしかYak-9が1.5万機程度、La-7が5000機程度だったかと思います。ラボーチキン製戦闘機を装備する部隊の多くはLa-5からLa-7に更新中であり、機数の判明する部隊の多くはLa-7が大半を占めているようです。
Yak-9にもいろいろ型がありますが、それぞれ特色があり、長距離型のYak-9Dは翼内タンクを増設して、航続距離を他の型の700㎞弱から1300㎞超まで伸ばしています。Yak-9Tは機首の20㎜砲を37㎜砲に換装、武装を37㎜×1、12.7㎜×1としています。1機2門なのは変わらず。Yak-9MとYak-9Uはエンジン換装型で、もともとM-105PFあるいはVK-105PFの1180psだったのを、MはM-105PF-2の1300ps、UはVK-107の1500psにパワーアップしています。
Yak-9とYak-3の違いですが、ともにYak-1をベースとして、練習機として構造を簡略化したYak-7の取り回しがあまりによく、これをベースに戦闘機に戻したのがYak-9、Yak-1を純然たる迎撃戦闘機として先鋭化、小型化したのがYak-3という感じでしょうか。
最も多種多様なのは海軍航空隊で、LaGG-3はともかく、I-16もまだ少数残っていました。陸軍も含めP-63装備部隊が一定数ありますが、7月ごろから更新が始まっています。1950年になってLa-7からP-63に換装した部隊もあるのでかなりの新鋭機という扱いのようです。個人的にはそもそもP-63が日ソ戦の前線に出てきていたのが意外でしたが、日本側も45年2月にはP-63が陸揚げされて配備に向かっているのを察知していました。他にもP-38やB-25などのアメリカ製機の情報が以下の資料にあります。
またこの資料を見ると当時の日本の公文書の中では、Якを「ヤー・カー」、Лаを「エリ・ア」、Пеを「ペー・イエー」など、キリル文字を単純に転記していたことがわかります。ただしЛаГГは「ラグ」。例外。
東「ソ」軍情旬報第一一六号(二月上旬 二月中旬) 昭和二〇、二、二四
https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/image_C16120726400
対日正面「ソ」聯兵力配備ノ件 昭和二〇年二月二十一日
https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/image_C16120726200
【訳出凡例】
воздушная армия 航空軍
смешанный авиационный корпус 混成飛行団
смешанная авиационная дивизия 混成飛行師団
истребительная авиационная дивизия 戦闘機師団
истребительный авиационный полк( иап)戦闘機連隊
прикрытие войск 地上支援
свободную охоту 遊撃
■ザバイカル方面軍(満州西部~北部担当)
●第12航空軍
〇第190戦闘機師団
・第17戦闘機連隊 P-63
出撃78、空戦1、撃墜1 *1
・第494戦闘機連隊 P-63 チョイバルサン
・第821戦闘機連隊 P-63
出撃117、損失1機
〇第245戦闘機師団
・第351戦闘機連隊 Yak-3(35機)、Yak-9(12機)
出撃275回 地上支援21、飛行場制圧197
会敵なし、損失2(Yak-3)
・第718戦闘機連隊 Yak-9
出撃264回、会敵なし、損失1
・第940戦闘機連隊 Yak-9
出撃256、地上支援59、輸送機護衛4、偵察67、飛行場制圧126
会敵なし、損失2(Yak-9,Yak-7U)
〇第246戦闘機師団
・第22戦闘機連隊*2 La-5,La-7
出撃76回(地上攻撃56、偵察18回、対空戦闘なし)
・第350戦闘機連隊 La-7,La-5
(La-7 37機 La-5 6機 Po-2 2機 +Pe-2 3機 Tu-2 2機 R-5 1機)
騎兵・機械化群指揮下で行動、出撃393回、空中戦闘なし
・第356戦闘機連隊 Yak-3,Yak-9
出撃116回、偵察37、爆撃護衛34、迎撃2、地上支援 30、襲撃5、哨戒4、遊撃4、空中戦闘なし
・第847戦闘機連隊 Yak-9
出撃96回、地上支援40、偵察22、爆撃護衛32、飛行場直掩2 空中戦闘なし
〇第6爆撃機師団
・第368戦闘機連隊 Yak-9U
〇第247爆撃機師団
・第70戦闘機連隊 La-7 パイロット37名
〇第248襲撃機師団
・第942戦闘機連隊 Yak-9 *3
出撃127回、会敵なし。墜落1、未帰還2
〇第316襲撃機師団
・第941戦闘機連隊 Yak-9
・第12独立偵察飛行連隊
●ザバイカル防空軍 チョイバルサン
〇第297戦闘機師団(297-я иад ПВО)
・第401戦闘機連隊 La-7 *4
・第938戦闘機連隊 Yak-9?
・第939戦闘機連隊 Yak-9?
■第一極東方面軍(満州東部担当)
●第9航空軍
〇第32戦闘機師団
・第47戦闘機連隊 Yak-9
出撃205回 損失4、うち非戦闘1
・第304戦闘機連隊 La-7 *5
損失4機、うち1機は空戦による。
・第535戦闘機連隊 Yak-9(42機)
・第776戦闘機連隊 Yak-9(46機)
出撃177回 被撃墜1(偵察)
〇第249戦闘機師団
・第5戦闘機連隊 Yak-3
・第305戦闘機連隊 Yak-9M
262回出撃 損失1
・第582戦闘機連隊 La-5,La-7
241回出撃 損失なし
・第781戦闘機連隊 Yak-9
177回出撃 損失1
〇第250戦闘機師団
・第48戦闘機連隊 Yak-9
78回出撃 損失1
・第361戦闘機連隊 Yak-9
・第913戦闘機連隊 La-7
160回出撃 損失なし
・第917戦闘機連隊 La-7
〇第34爆撃機師団
・第531戦闘機連隊 Yak-9M(53機)
●沿海防空軍
〇第147戦闘機師団 スパスク=ダーリニィ
・第34戦闘機連隊 La-5,La-7
64回出撃
・第404戦闘機連隊 Yak-9M *6
・第429戦闘機連隊 Yak-9M/U *7
・第564戦闘機連隊 La-5,La-7 *8
77回出撃
■第二極東方面軍(満州東部~樺太担当)
●第10航空軍
▽第18混成飛行団
〇第296戦闘機師団
・第14戦闘機連隊 La-5(33機),La-7(10機)
302回出撃 損失なし
・第529戦闘機連隊 Yak-9M/Yak-9T
255回出撃 損失5(4機Yak-9,1機Po-2) うち非戦闘2(1機Yak-9,1機Po-2)
(戦果:火砲2,自動車22,馬車21,機関車9,貨車18)
・第534戦闘機連隊 Yak-3(38機),Yak-9(10機)
101回出撃 損失4
(戦果:自動車4,馬車1,機関車3,貨車1,格納庫2)
・第583戦闘機連隊 Yak-9M(40機),Yak-9T(10機),Yak-9D(1機)
162回出撃
(戦果:自動車5,馬車10,機関車1,貨車2)
・第777戦闘機連隊 Yak-9
出撃238回 損失2
(戦果:集積所2,自動車11,馬車4,機関車2,サイロ1)
〇第128混成飛行師団
・第410戦闘機連隊 P-63 *9
12回出撃 損失1(非戦闘)
・第888戦闘機連隊 P-63(33機),I-16(5機)
193回出撃 損失5(うち戦闘2)
〇第255混成飛行師団
・第610戦闘機連隊 Yak-9,Il-2(8機)
・第936戦闘機連隊 Yak-9
〇第29戦闘機師団
・第307戦闘機連隊 Yak-9
160回出撃 損失1
(敵機地上撃破4)
・第308戦闘機連隊 Yak-9
189回出撃 損失1(敵領内に不時着)
(戦果:自動車5,馬車1)
・第528戦闘機連隊 Yak-3
83回出撃 損失なし
(地上支援42,飛行場襲撃8,偵察33)
・第911戦闘機連隊 La-7(57機),La-5(2機)
80回出撃 損失1
(地上部隊襲撃4,地上支援38,飛行場襲撃4,偵察34
戦果:敵機地上撃破1,馬車1)
〇第254戦闘機師団
・第300戦闘機連隊 Yak-9D
234回出撃 損失なし
・第301戦闘機連隊 Yak-9
62回出撃 損失1(非戦闘)
・第302戦闘機連隊 Yak-9
149回出撃 損失1(非戦闘)
・第912戦闘機連隊 Yak-9M(23機),Yak-9T(16機)
189回出撃 損失なし
(地上部隊襲撃4,地上支援26,護衛88,偵察30,移動41
戦果:トーチカ2,倉庫1,舟艇1)
・第7独立偵察飛行連隊
・第411観測・偵察飛行連隊
●沿アムール防空軍
〇第149戦闘機師団 ニコラエフカ
・第3戦闘機連隊 Yak-9(32機)
13回出撃 損失なし
・第18戦闘機連隊 Yak-9
22回出撃 損失なし
・第60戦闘機連隊 Yak-9
14回出撃 損失なし
・第400戦闘機連隊 La-7
●太平洋艦隊空軍・防空軍(満州東部,朝鮮北部,樺太)
(海軍飛行連隊は略称иап ВВС ВМФで示される)
・第6戦闘機連隊
・第12戦闘機連隊 Yak-9?
・第14戦闘機連隊 Yak-9
・第17戦闘機連隊
・第19戦闘機連隊 Yak-9 *10
・第27戦闘機連隊
・第31戦闘機連隊 Молдавановка
・第38戦闘機連隊
・第39戦闘機連隊 Yak-9 Унаши
・第41戦闘機連隊 LaGG-3,La-7 Постова
・第42戦闘機連隊 LaGG-3,Yak-9 Знаменское ,Гроссевичи
・第43戦闘機連隊
・第45戦闘機連隊 LaGG-3,Yak-3 *11
・第58戦闘機連隊 Мариинское
・第59戦闘機連隊 Yak-9 ニコラエフカ
・第61戦闘機連隊
・第50独立長距離偵察飛行連隊 DB-3(18機),A-20G(12機),B-25(1機),Yak-9(4機),Yak-9R(10機) Великая Кема *12
http://militera.lib.ru/h/ivanov_pn/07.html
http://allaces.ru/sssr/struct/p_iap.php
*1 8月15日、被撃墜機は隼。Ванемяоに着陸する輸送機を九七式戦と2機で狙ったところを攻撃した。
http://vspomniv.ru/kingkobra.htm
*2 第22ハルヒン・ゴル赤旗戦闘機連隊が正式。ノモンハンでの武勲による称号。
*3 8月20日、Yak-9 2機をもってプロパガンダ(?)チラシを投下したB-24をインターセプトして奉天飛行場に強制着陸させる。
*4 8月12日、ボルジャ近郊20㎞において九七式重爆4機を撃墜
8月15日晩、ボルジャ近郊にて百式重爆、一式戦合わせて3機を撃墜不確実
*5 8月15日、А. И. Черепнин少尉機が百式重爆を体当たりで撃墜。追撃中に弾切れのため、少尉は乗機を重爆の尾翼にぶつけ撃墜、自機も墜落したものの落下傘で降下、生還した模様。
https://military.wikireading.ru/23212
*6 8月9日昼、Сарбакванにて百式司偵2機を撃墜
*7 http://www.ww2.dk/new/air%20force/regiment/iap/429iap.htm
*8 http://parnasse.ru/prose/essay/history/564-i-istrebitelnyi-aviacionyi-polk.html
*9 8月13日にP-63を受領、翌日戦闘機連隊に改称した。それ以前は第410襲撃機連隊であり、装備機はIl-2だった。
*10 8月15日13時半、第55爆撃機連隊(55BAP)のPe-2編隊29機が朝鮮北部清津港近くの羅南駅を爆撃する護衛につき、迎え撃った雷電2機のうち1機を撃墜。
その夕方、33BAPのPe-2編隊34機が富寧駅を爆撃する護衛につき、再び上がってきた雷電1機を撃墜する。
*11 8月18日に飛燕4機を撃墜している。
*12 8月10日朝、羅津港沿岸においてYak-9が九七式飛行艇を不確実撃墜。同日、第37襲撃機連隊のIl-2が97式飛行艇を後部銃座で撃墜している。
http://www.j-aircraft.com/research/soviet_navel_aerial_kills_augus.htm
(上記註は特に断りない限りhttp://aces.safarikovi.org/victories/sssr-japan.1945.htmlによる。)
参考
以下検索用 いずれもウィキペディアページ題
12-я воздушная армия
245-я истребительная авиационная дивизия
351-й истребительный авиационный полк
Забайкальская армия ПВО
Приамурская армия ПВО
Приморская армия ПВО
Военно-воздушные силы Тихоокеанского флота
空戦のスタディ 前河涼介 @R-Maekawa
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