そして彼女は死んだ。
@kr112489
第1話 通知
午前6時。既に部屋の温度は30度近くまで上昇しており設定していたアラームよりも早く目が覚めた。
エアコンを入れっぱなしにして寝るのはあまり好きではないので、いつも寝付く頃にタイマーが切れるように設定してある。なので朝方には大体びっしょりと汗をかいているのだが、この汗をシャワーで流す事で僕はいつも朝の始まりを迎えるのが好きだった。
アラームを解除した後、寝転がったまま僕は真っ先にSNSアプリを開き、そこに表示される3件の通知を開いた。
2件は新たに僕のアカウントをフォローしてくれたものを示す通知だったが、もう一件はダイレクトメッセージが届いた事を知らせる通知だった。
僕は主に趣味の釣りのことと仕事の愚痴しか呟かないので、基本的にフォローしてくれる人も9割以上が男性をしめていた。
ダイレクトメッセージもおそらく男性からだろうと考えることすらしなくなっていた僕は流れ作業的にダイレクトメッセージを開いて中身を確認した。
『はじめまして。突然ダイレクトメッセージを送らせていただいた不躾をお許しください。 実は私も釣りが大好きで、この間あなたが投稿した画像をみて同じスポットで釣りをしていると言うことに気がつき、思わず親近感からダイレクトメッセージを送らせていただきました。 もし、不快でなければこれから仲良くしてください。』
不快なわけはなかった。 女性からのコンタクトは正直嬉しかったし、決して出会いや疚しい関係を求めているわけではなかったが、男のさがだろうか。 少しだけ胸がときめく感覚を覚えた。
『おはようございます。メッセージありがとうございます。釣りが好きな女性は少ないので、女性の釣り好きの方と繋がれたのはとても嬉しいです。 こちらこそ、よろしければ仲良くしてください。』
寝ぼけた頭で、だけど機械的にフリック入力でものの1分もかからずに、文章を作り送信のボタンを押す。
その後、YUIとローマ字表記された彼女のアカウントの過去の投稿をさっと流し読みしたあと、僕はシャワーに向かった。じっとりと体を纏う汗を流し、序でに歯磨きと髭剃りを済ませた僕は少し余裕のある時間を駅の近くのカフェで過ごすことにして、家を出た。
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