殺意で結ばれた友情

Kacchaman

第1話 インテリア

第一話 「インテリア」


月明りが照らす中、小屋がたっている。


そこに生命の気配はなく、中には死を象徴する人骨が散乱、頭部だけが棚にいくつか陳列されてあった。


斧や鉈、刃物が数種ならび、他に人工的なものといえば、木を採取し、板を切り張りしただけの、ベッドや腰かけぐらいである。


ここが、殺人鬼Mの棲家であった。


横たわっていたMは、その巨体をゆっくりと起上させると、鉈を手にとり、外へ出ていった。




森の眠りを妨げるように、アッパーミュージックを大音量で垂れ流し、火を囲んでいる数人のパリピ族。


イチャツク男女、ステップを踏んでいる女、女を口説く男。

 

酒に身をまかせ、今ある最高の瞬間を逸楽している。


やがて訪れる死の概念は、今の彼らには想像すら難しい。




小屋へ戻るM、その手には足首が握られ、屍となった男が引きづられている。

 

中へ入ると、内装が変わっていた。


散骨は人体の形をとり戻し天井から下がり、頭部はペイントや被りもので化粧され、インテリアの一部と化していた。


プラスα、カーテンや壁紙、雑貨にいたるまで手施され、板式のベッドには分厚い布団が敷かれている。


変化に気づいたMは、体動に情緒を見せないまま、おもむろに外へ出た。




見渡せば広がる闇の中に、二つの光芒を見つけた。


それは徐々にMに近づき、言葉を放った。


  「気に入ったか?」


Mの視線の先に、忍の装束を身にまとった男が姿を現した。


突然の侵入者に戸惑う様子も間もなく、忍へと歩を進めていくM。


二人の距離が縮んていく途中で突然、屍男が呻き声をもらした。

 

振り返るMは首を傾げた。


仕留めたと思っていた男が生きていた。


自分の右腕を目の前にかざすM、肘に手裏剣が刺さっていることを視認する。


それが屍男へ与えた殺傷力を弱めたこと、さらには持ち主が、突然現れた忍であることも。


Mは手裏剣を引き抜くと、横たわる屍だった男に近づいていく。


Mに気づいた男は、瀕死の状態でありながらも身体をふるい立たせ、後退する。


追撃の手が男の身体にふれる瞬間、鋭く風を切る音がMの耳もとを通過した。


同時に地へ崩れおちる男。


男の襟もとに、手裏剣が刺さっていた。


勢いよく後方を振り返るMだったが、そこに在るべき忍の姿はなかった。


周囲を見わたし、界隈を探り歩くM。


そのうちに男も消え、Mは足早に闇の中へと散策に移った。


小屋の陰に潜んでいた忍。


Mの消えていく背中を確認すると、男を蘇生させた。




月も眠りについた刻限、我が家へ戻ってきたM。


装飾された室内を改めて見渡す。


壁際に立てられた刃物を手にとり、舐め射るようにみる。


手入れされていなかった刃も研ぎ澄まされている。

 

首を傾げるM。


奥へと進み、布団へ身体を沈めると、完全に動きを止めた。




周囲から各段とび抜けて高い木、そのてっぺんに忍はいた。


ロープでつながれた木と身体。


太い枝群の根元が作る空間に、柔らかな身体を沿わせて寝ている。

 

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