素人の不思議な記憶
伊豆長岡 辻堂
第1話:東京のおばあちゃんの記憶
東京のおばあちゃんに関する記憶です。私の実家は広島でしたが、親戚縁者がとても多く、いわゆる本家にあたる親戚の所在が東京であった為か、東京の祖母のことを皆はそう呼んでました。但し、私自身はその名で呼んだことも無ければ、本人に会ったことはありません。広島から東京という距離間の問題では無く、会えない事情があったのです。
ある日突然目の前に、小さな建物が登場します。その建物の左手に屋外から直接二階へ通じる階段があり、その建物の一階右手にはお肉屋さんと思しき店があります。その階段をゆっくり上がると右手に畳敷きの部屋がありました。ゆっくり上がるといっても、自分自身で歩いている感覚はありませんでしたが。
その部屋の真ん中には、白い布を顔に掛けられた人が布団の上に横たわっており、周りを沢山の人が囲んでいました。泣いている人も多くいました。
その記憶は引きずり続け、中学生頃に母親に思い切って伝えたところ、驚きの表情を隠せませんでした。そうです。その横たわっていた人は、東京のおばあちゃん本人であり、お通夜の最中だったのです。亡くなられたのは1958年、私が生まれる前とのこと。
母親は私を身ごもった体で、そのお通夜に参列したそうです。私は母親のお腹の中から、まるでカメラ越しに見るかのように、その光景を眺めて記憶していたのでした。
一階右手のお店はやはりお肉屋さんであり、二階はすき焼き屋さんだったそうです。
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