第1回エレメンタルマスター大会決勝戦

 第1回エレメンタルマスター大会決勝戦。審判員が「レディ……」と開始の構えをする。

 500円ほどの大きさの金色のメダルを、親指で弾き宙へ浮かす。飛んだメダルはゆっくりと回転し、放物線を描くように落下を始める。扇形の光が空へライトアップ。水中にダイブしたかのように光の中で遊泳。無重力になったかのように、空中で静止する。

 静止したメダルはパリィン! とメダルサイズから、手のひらサイズへ大きくなり。コンペイトウのような形に変貌。水晶の結晶体のような透明感と、ダイヤモンドのような煌びやかさを輝かせ。星明かりのように点々と灯が燃える。

 西部劇の拳銃の引き金を抜くような緊張感と構えで、ヒーロー戦隊のお約束変身シーンでの、前振り動作をした後。遥和と幸は声を合わせる。

『「精霊憑依(ジーニアス エンビー)! 武装展開(アームド デプロイメント)! 心のエレメンタル! 名は……!」』

 拳銃を抜くように水晶を割る。審判が「ファイト!」っと告げる。

「護る!」

『夢想(むそう)!』

 遥和には緑色の風が吹き、精霊という名の光が自身を包み込む。

 照礼には虹色の粒が吹き、精霊という名の光が自身を包み込む。

 見物人達の歓声が聞こえる、大盛り上がりだ。そして瞬く間に時が経過する……。


 観客の胸躍る喜びと、残念がる悲痛な叫びが混じり合う歓声の中。実況者が白熱の決勝戦を生中継で伝えるが、その出来事は一瞬過ぎて心の準備がすむ前に終わってしまった。

 正確には、照礼に憑依した幸が『99(ナインティナイン)』という、99個ある自身の能力の中の1つを発動。遥和の過去に背負った痛みや傷を全部、今に蘇らせた能力『タイムショック』と言う技を叩きだし、終わったからだ。

 数々の修羅場を潜り抜けてきた勇者こそ、戦うほど不利になってしまう力だった。

「あ―っと! やはり強い神様幸! 遥和選手、手も足も出ない!」

 照礼に憑依した幸は、倒れた男。遥和を堕落的な感情と共に見上げながら、圧倒的な力の前に、寂しそうな態度で告げる。

『つまんない』

 神様には、強すぎて張り合うべきライバルが居ないのだ。倒れた遥和は、最後まで立ってられるのは、基礎からしっかり作った奴だけだと言わんばかりに起き上がり。微笑と強がりとは違う確信をもった態度で声を絞り出し、立ち上がる。

「おもしれえ……! お前がつまらないと言うたびに俺は面白いって言ってやるよ。人知を超えたその先へ俺がつれていってやる!」

 幸はその言葉に対して苦悶が徐々に変わり、不敵な微笑を掲げ、含みのある態度で喜ぶ。

「はん、そいつは楽しみだ、はてさて。それは本当に実現可能なのか……」

 少年は、短く。端的に勇気を持って答える。

「できる。俺を信じろ!」

「ふむ、それなら合格じゃ」

 かくして第一回エレメンタルマスター大会は終わりを告げ、次のステージへの幕が上がる。

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