第26話
浮気相手なりに夫を愛してはいたのだろうが、所詮はそんなものだ。ちょっと揺さぶれば怖がって現実に戻る。その現実の愚かさに気付いて目を覚ますと、そこからまたお花畑のような前にいた世界に戻ることはできない。私だってそうだったのだからよくわかる。
二十代後半という女としていろいろな可能性を秘めている年齢や正社員という今の社会で生きる女性にとっての尊い武器と、この世に何十万人といる中の一人にすぎないただの既婚男性を天秤にかけた結果、夫は勢いよく天秤から投げ出された。
心の天秤は残酷で正確だ。ついさっきまでどっち付かずでふらふら揺れていても、決め手になる何かが起こった瞬間、片方の天秤がどっと傾いてもう片方の天秤に乗っていたものは弾き飛ばされ、もともと何もなかったかのような扱いを受ける。女の天秤は男の天秤に比べてより精度が高く、一度量りにかけて傾いたが最期、重さが覆ることは無い。浮気相手は確かに過ちを犯したが最後まで愚かな女ではなかったのだ。
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