第19話

 私は浮気相手の女の心を壊す方法はここにあると思った。法律上、不貞をしたところで二人が刑務所に入ったり死刑になることはない。科せられるのは慰謝料と言う名の罰金刑や心のこもっていない謝罪くらいのものだろう。それではあまりに罪が軽すぎる。


 法律という万人に向けて用意された処分なんかで、人を傷つけ裏切るような奴らの性根が正されるわけがない。それならば私があいつらにふさわしい処分を下してやろうと思った。私が考えた私を慰めるための私が執行する刑だ。裏切り者には相応の罰を受ける義務がある。


 だが、このように意気込んでいても不意に心に影が迫ってくるような不安に潰されそうになることもあった。もし私が私刑を実行したとしたら、脅迫罪のような罪に問われてしまうのだろうか?


 自分たちの犯した罪を棚に上げて、あいつらが私を訴えることがあるのだろうか?


 平気で身内を裏切るようなやつらならあり得るかもしれない。もしそうなったとして、私はその罰を受け入れ、反省するのだろうか?


 裏切られた上に罰も与えられて、悲しみに暮れながらこの先の人生を縮こまりながら娘と二人生きていくことができるのだろうか?


 復讐と背中合わせにあるように思われる、自分の憐れな『その後』を想像すると涙が滲んでくる。それでもやらねばならない。今までしたことのない復讐という行動に自分自身で慄きながらも、どうしても許すことのできない夫と浮気相手の女を思い出してみるとやはり殺意がごぼごぼと湧き上がってくる。


 もう止められないと思った。まだ見ぬ未来よりも、今の殺意。私なりのやり方であいつらを裁いて見せると誓った。

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