第9話
結婚して十年経つまで彼が浮気者だというところは見抜けなかったが、短所のように見える優柔不断な所は、実は私が好きな彼の長所だった。ぱっぱと物事を悩まず決めて突っ走っている私には、彼のじっくり悩みながら慎重に人生を歩んで行く姿は魅力的に見えた。この人と結婚したら彼は短絡的な私の行動にブレーキをかけてくれる存在になってくれるのだろうと思っていた。性格が正反対でも、結婚すればちょうどバランスが取れて上手くやっていける気がしていたのだ。
私の人生双六の華麗な上りにケチがついた浮気騒動の原因は夫の性根が腐っていることが何よりの原因であったが、今はそこを見抜けなかった私にも落ち度があるように思えてならない。何より、私は彼を信頼しすぎた。しかし結婚生活とは夫婦の信頼関係によって成り立っているものだから当たり前のことをしただけだとも思っているが、結果私は裏切られた。信頼しあわず、裏切り合う夫婦などこの世に存在しているものなのだろうか。答えは否であろう。
いったいどうすればよかったのだろう、と考えても仕方のないことを考えてしまう。私が何をどうしていようと夫は浮気をする運命だったのだろうか。それなら最初から結婚などしない方がよかったのかもしれないが、娘の顔が浮かぶとそんな風には考えたくないと思う。結婚生活の全てが悪だったわけではない。嫌な思い出ばかりでもない。妻になった自分も、彼を選んでしまった過去の自分のことも否定したくはなかった。
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