共犯

千秋静

第1話

 なぜこんなところに汚れが付くんだろう・・・。


 状況に合わない疑問が頭に浮かんだことで、案外自分は冷静でいられているのだということがわかった。


 そう安くもないラブホテルの壁を見つめながら、どう話を切り出そうか迷った。泣きそうな顔をして話すべきか、冷たい表情で話すべきか。笑顔以外の表情ならどんな表情でも通用する内容だ。だが、できるだけ心と表情はリンクしている方が真実味があると思っている。だから俺は泣きそうな顔をしようと思った。


 壁から目を移して後ろを振り向いてみると、裸でベッドに突っ伏したまま微睡んでいる彩音がいる。こちらから顔は見えないが、布団もかけず若い体を無防備に晒したまま幸せな雰囲気に浸っているように見える。


 この状況で言わなければならないのか・・・。


 この子に罪はないのに・・・。

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