第15話

純粋なる恐怖に満ちた悲鳴。


私が今までに一度もだすことが出来なかった絶叫。


自然でごく当たり前のものです。


女子高生は、その頭が天井についてしまうのではないかと思えるほど飛び上がり、そのまま転げ落ちるようにバスを降りてゆきました。


そして声を限りに叫びながら、暗く細い山道を走り去っていきました。


もちろん運賃など、払ってはいません。


女子高生が去った後、老婆がおもむろに立ち上がり、そのままバスを降りていきました。


扉が閉まり、バスは走り出しました。


静かでした。


エンジン音などは聞こえてくるのですが、私にはとてつもなく静かに感じられました。



いつもの終着地。


少しばかりの民家の灯りが、より寂しさを演出しているかのような場所。


しばらく待てば、バスはそのまま私を家の近くまで運んでくれることでしょう。


――明日、どうしよう……。


私がこの状況下においても明日このバスに乗るべきかどうかを考えていると、バスはいつの間にか目的の停留所に近づいていました。


その時私は、眠った覚えも気を失った記憶もありませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る