第5話 五ー一

  そうやっているうちに、僕は高校3年生になった。公彦とは同じ高校に進学し、今ではクラスメイトにもなっている。

 そして僕たちの夢もまだ続いている。僕たちは高校生の大会に出場し、見事地方大会の決勝までコマを進めた。

 ―その決勝の前日。

 「いよいよ明日が決勝だな。」

「うん。絶対勝って、全国大会出ような!」

僕は公彦、また他のチームメイトとも気合を入れ、翌日を待った。


 翌日。1回ウラ、僕は先頭バッターとして相手ピッチャーの球を受けた。

 「ストライク!」

相手の球は―、予想以上に速くて打ちづらい。

 これは事前のデータ収集、研究で分かっていたことだが、データと実際に打ってみるのとはもちろん違う。

 「ストライク2!」

 しかし僕も負けてはいない。何せ運動神経は抜群なのだ―自分で言うのも変なのだけど。

 「ボール。」

 何度かファールで粘り、また相手のボール球も稼いだのだが―。

 「ストライク!バッターアウト!」

 僕の初回の打席は三振に終わってしまった。

 「智哉、気を落とすなよ!まだ初回じゃん!」

 僕は直後に公彦にそう声をかけられ、

「だよな!まだチャンスはある!」

そう公彦に返した。


 そして試合は一進一退の攻防を続けたが、お互いに決め手がなく0―0のまま終盤へ向かう。

 そして、9回ウラになった。ここで一発が出ればサヨナラで僕たちが勝利する―、そんな場面で僕に打席が回ってきた。

 「智哉、落ち着いて塁に出ることだけ考えろ!」

 もちろん僕はそのつもりだった。

 しかし。

 その瞬間は一瞬だったのだろう。でも僕にはそれはものすごく長い時間のように感じた。いや、それは「時間が止まった」と形容するのが正しいのか、どうか―。

 それは初球だった。今まで厳しい所に決まっていた相手ピッチャーのボールが甘く真ん中に入ってきた。それは一瞬の隙。いわゆる、失投。

 この球ならサヨナラホームランにできる!僕は0コンマ何秒でそう確信した。そして後はバットを力まず振り抜くのみ。そう、その瞬間はまさしく、「ボールが止まって見えた。」

 

 そして僕は冷静になりながら、【■】のボタンを押した。

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