評価とは、無から錬成できるものである
シル様とハルトくんを引き合わせるという約束をした私は、すぐにマティアス様にお茶会の許可を取った。(ついでにレオナルド様にも)
「それほど仲良くなったのか。フォルレットの素晴らしいところが王女に伝わって、私もうれしいよ」
私に対する過大評価なマティアス様は、そう言ってとても優しい笑みを浮かべていた。
「だが、あと三日しかないとなれば使用人たちに命じて急いで準備をさせなければ。王女をお招きするのに、普段の茶会ではいけないだろう?」
「そうですよね」
シル様にとってのメインディッシュは、あなたの弟ですが。
むしろそれさえあれば、お茶が粗茶だろうがケーキが市販の庶民仕様でも何でもいいと思うんですが……
ただし、そんなことは言えないので私は彼の言葉に頷いた。
まぁ、普通に考えると伯爵家のメンツがかかっているので粗末なおもてなしはできないよね。
「私、がんばります!」
「すまない。王子の警護があるから私は手伝ってやれないが」
「いえ、これは私がお友達を呼ぶというイベントですから。お気持ちとお姿を見られるだけで、一生感謝し続けられます」
シル様の世界線を越えた愛がどうにか報われてほしい一心で、私はお茶会のセッティングに挑む。
ハルトくんの予定を確認すると、今はまだ騎士学校と実務の半々だそうで、呼べばいいと言ってくれた。
「王女の警護に不安でも?それならハルトよりもガークを派遣しよう」
「あ、いえ。ハルトくんが適任なんです。彼以上にふさわしい護衛はいません」
「うちの邸の中を知っているからか?」
「そうですね。やはり身内が一番安心といいますか……」
別にガーク様に問題があるわけではございませんが。
私が言葉を濁していると、マティアス様はそっと私の手を握って笑みを深める。
「そうか、気を回してくれたんだな」
「はぃ?」
予想外の言葉に、私はきょとんとしてしまう。
「邸に他国の王族を招く機会など、今後ないかもしれないからな。ハルトに要人警護の経験を積ませてくれようとしたんだろう」
ものすごくプラスに考えられている!
ここまで来ると過大評価ではなく、無から評価を錬成してしまっている!
とはいえ、本当の理由は言えないので私はおもいっきりその評価に乗っかった。
「え、ええ。この機会がハルトくんの将来に役立てばいいと思いまして……余計なことかとも思ったのですが、せっかくですので」
とはいえハルトくんに会えるとなれば、シル様は毎年うちに来そうだな。
「ハルクライトは随分と君に懐いているようだし、私も安心だ。ただし、また何かあったら心配だから、ガークや他の騎士も王女の護衛につけておく。いいね?」
「わかりました」
う~ん、何だか護衛だけでとんでもない人数になりそう。首脳会議レベルの厳戒態勢が敷かれる気がしてきた。
お茶会を、ってさらっと決めちゃったけれど、シル様ってやっぱり王女様なんだな。簡単に出歩けないということをヒシヒシと感じる。
あのヤンキー気質を隠しながら王女様をやるって、かなり大変だったんじゃないだろうか。
これから政略結婚が待っているかもしれないし、せめて「推しに会いたい!」という願いはかなえてあげたいと思う。
レオナルド様にはお茶会の許可と、エレノアを城に軟禁しておくように念押ししてその夜は帰宅した。
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