秘伝のチョコは秘密のお・あ・じ♡ ~エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-外伝~

さいとう みさき

秘伝のチョコは秘密のお・あ・じ♡

秘伝のチョコは秘密のお・あ・じ♡



 私、ハミルトン家菓子とデザート作り担当のササミーは困っていた。



 奥様から渡されたこの秘薬でお菓子を作ってほしいとの事だ。

 

 なんでもいつもお忙しい旦那様にお菓子と一緒にこの秘薬を召し上がっていただき元気になっていただきたいらしい。


 以前、秘薬を夜のお料理に旦那様の分だけ入れるようにしていたそうだが、効き目がそれほどではなかったそうで、今回は更に効果があるお薬を簡単に召し上がっていただく為にお菓子にしたいそうだ。


 流石「稀代の魔女ユリシア」と呼ばれた奥様、旦那様を元気になされるお薬をお持ちだとは。



 しかし、奥様はなんで私に秘薬を入れた後は味見をしてはいけないとおっしゃったのだろう?

 味を見なければ出来栄えもわかりにくいのに。

 でも、最後にほんの少し入れれば良いとおしゃっていたので、味見の後に入れれば良いか。

 そんなことを考えていたが・・・ 



 旦那様が好むようなお菓子って何だろう?



 私は思案する。



 確か以前はマカロンをお出ししてもあまり召し上がらなかった。

 その後にクッキーを焼いてみたが少ししかお召し上がりにならなかった。

 後はフルーツ系のお菓子だが、アップルパイはシナモンが苦手とおっしゃっていたし、砂糖漬は甘すぎるとおっしゃっていた。




 ではどのようなものがよろしいのだろう?



 と、このお屋敷のお嬢様、エルハイミ様がおいでになった。


 「ササミー、ティアナがマカロンのお代わりを欲しいと言っていますわ、まだありまして?」


 先日五歳のお誕生日を迎えめっきりお可愛いくなられたエルハイミ様は空いたお皿を持ってとことこと私の所まで来られた。



 ううっ、かわいいい!  


 

 お人形のようなエルハイミ様。

 お皿を割らないように慎重にテーブルの上に置いている。

 まだ身長が低いせいもありその様子が特にかわいらしい。



 「エルハイミ様、お皿は私にいただけますか?すぐに追加のマカロンをお持ちいたします。」


 そう言ってエルハイミ様がおかれたお皿をとろうとして手を滑らせる。


 しまった!

 やってしまった!


 内心冷や汗をかいたがお皿は床に触れる寸前で止まった。

 見るとエルハイミ様がふうっと息を吐いて手のひらをお皿に向けている。

 お皿はすうっっと持ち上がり私の手元まで来る。


 「ササミー、気をつけないとメイド長のエルザさんにまた叱られますわよ。さ、受け取って。」


 無詠唱魔法をお使いになられるエルハイミ様はとっさに念動魔法でお皿が割れるのを防いでくださったのだ。

 私はお皿を受け取りエルハイミ様に平謝りした。


 「すみません、エルハイミ様!私が不注意なばかりにお手数をおかけしてしまって!」


 「ササミー、大丈夫ですわ。それよりマカロンのお代わりをお願いしますわ。」


 私は急いで受け取ったお皿に追加のマカロンを載せ、エルハイミ様と共にティアナ様のお待ちする中庭に向かった。




 マカロンをお持ちする間、私はふと旦那様の好物についてエルハイミ様ならご存知ではないかと思った。


 「エルハイミ様、すみませんが旦那様のお好きなお菓子ってご存知ないでしょうか?」



 えっなに?という感じの小動物のようにエルハイミ様は顔を私に向ける。

 そのしぐさときたら、まさしくかわいい小動物そのもの、思わず見とれる。



 「ええと、お父様ってあまり甘いものお好きじゃなかったと思いますわ。だからお菓子と言っても・・・」



 悩む姿もお可愛らしい!

 小さな唇の下に人差し指をつけ、上目づかいで悩んでらっしゃる。

 う~、う~と軽く唸るさまがまた可愛らしい!

 もう、そのまま私の部屋に持ち帰ってしまいたいくらいだ。



 「そうだ、そう言えばイーガルお爺様が先日くれましたカカオを一緒に食べたときはおいしいとおっしゃっていましたわ!」



 ポンと手のひらを叩いて明るいひらめき顔でおっしゃる。

 その様がまた可愛らしい。



 「カカオと言いますと最近南方から入るようになったあの茶色っぽいナッツの事でしょうか?」


 「ええ、それですわ。でも少し食べにくいのでチョコレートにしたらもっと食べやすいでしょうに。」


 「チョコレートですか?」


 「はい、チョコレートですわ。」


 「・・・・・」


 「?」


 「あ、あの、エルハイミ様、チョコレートって何ですか?」


 カカオって言うものは私も見たし味見した事が有る。確かにほんのり甘苦く独特な風味があるナッツだ。

 

 「ええと、カカオを煎ってから粉砕してパウダー状にしたものにお砂糖やミルク、植物油や香辛料を一緒に練り上げたお菓子ですわ。」


 流石エルハイミ様、博識でいらっしゃる!

 私なんか想像もつかないお菓子をご存じでいらっしゃる!

 が、しかし私の方がだめだった。


 「すみません、エルハイミ様どうも想像がつかなくて、どういったものかいまひとつわかりません。」


 自分の無知を恥じながらエルハイミ様にお聞きする。

 するとエルハイミ様はうーんと悩んでいらっしゃる。

 それからお茶が終わった後で厨房に行くから一緒に本を見ながら再現しましょうと言ってくださった。


 

 お優しいエルハイミ様、まさに天使だ。

 私はほこほこになってエルハイミ様を厨房でお待ちすることにした。    

  

  

 我が国のお姫様、ティアナ様にマカロンをお届けして、私は早速厨房に戻る。

 確かイーガル様が南方より取り寄せたカカオがまだまだ沢山あったはずだ。

 私はエルハイミ様がおっしゃっていたその他の食材も可能な限り準備しておく。





 しばらくしてエルハイミさまが一冊の本を抱えておいでになった。



 「ササミー、この本にチョコレートの作り方が書いてあります、一緒に作ってみませんこと?」


 ああ、エルハイミ様!

 このかわいらしいエルハイミ様とご一緒できるなんて!

 是が非でも無い。

 

 私は快諾してエルハイミ様と一緒にチョコレートを作っていく。

 


 そうしてエルハイミ様の指導の下、練り上げて後は型に入れて冷やせば出来上がりとなる。

 と、エルハイミ様がここで味見しようと仰った。

 

 まだ暖かい水あめのようなチョコレートを小さなスプーンに少し取ってエルハイミ様にお渡しする。

 エルハイミ様はそのかわいらしいお口でチョコレートを食べる。

 

 もごもごされてからかわいらしい舌で唇を軽くぺろりとされてから、うん美味しいと仰った。

 その動作が子猫のようでまた可愛らしい!



 ああ、エルハイミ様~。


 うっとりとみていたらエルハイミ様はそのスプーンでチョコレートを少しすくって私に向けてあーんしてと言ってきた。


 

 !!



 私は天にも昇るような気持ちになった!

 にっこりと微笑まれるエルハイミ様。

 小さな手に小さなスプーンを携えあーんしてと迫ってくる。


 もう、うれしくて私もあーんとしてしまう。


 そして口に入れていただいたチョコレートは今までに味わったことの無い美味しさであった。



 何これ!?


 

 甘みは確かに強すぎず、濃厚でいてそれでいてしつこ過ぎず、後味がずっと口の中で消えないでいる。


 これがチョコレート!?


 驚きの味だ。


 「確かチョコレートには疲労回復や消化促進、あとポリフェノール成分とかいうものが身体に良いらしいですわ。」


 「ぽ、ぽりふぇ・・・??」


 「私も詳しくは知りませんが、とにかくこのチョコレートにすると少量の摂取で栄養補給ができるらしいですわ。」



 流石エルハイミ様!

 そのような魔法のような食べ物までご存知とは!

 これなら奥様の秘薬と相乗効果で旦那様のご健康も安泰でしょう!

 しかも少量ならば旦那様もお菓子でも召し上がられるはず。


 まさに理想的な食べ物!


 「エルハイミ様、ありがとうございます!完成いたしましたら明日のお茶にお出ししますね!」


 エルハイミ様は期待してますわ~と言って本を書庫番人のヨバスティンに返しに行かれた。



 私は早速、奥様の秘伝のお薬を取り出す。

 そしてふたを開けチョコレートへ少量入れる。


 透明で無臭のお薬は簡単にチョコレートへ混ざっていった。

 私はそれを型に入れて冷やす。

 エルハイミ様のお話では固まるとビスケットより硬くなるそうだ。


 型に流し込んだがまだまだ残っている。

 ふと、エルハイミ様の小さなお口を思い出す。

 あのお口でいただいてもらうにはもっと小さな器で固める必要があるだろう。

 私は一口で頬張れるくらいのスプーンを何十個も用意してその上にチョコレートを流し込む。

 大体五十個くらいでチョコレートは使い終わった。



 と、ふちに残ったチョコレートに目が行く。

 このまま器を洗ってしまうのはもったいない。

 私はきょろきょろと周りに誰もいないのを確認して指でふちに残ったチョコレートをぬぐい取り口に入れる。



 う~ん、おいしいぃ!



 これはお薬を入れた後の味の変化の確認と、ふちに残った食材の処理なのだ。

 決してチョコレートをもっと食べてみたい誘惑に負けてはしたない事をしている訳じゃ無い。


 そう自分に言い聞かせて器を舐めとったかのようにきれいになるまでつづけた。





 どのくらいたっただろうか?

 冷やすために大理石のテーブルの上に置いておいたチョコレートは硬化をしてビスケットより硬い石のような塊になった。


 私はまずスプーンに流し込んだ小さいチョコレートを確認する。

 スプーンを裏返して軽く振ってみると、チョコレートは丸っこい形でポロリと落ちた。

 拾い上げてみて触ってみると、飴玉のように固まっている。


 うん、なかなかの出来かな?

 これならエルハイミ様のあの可愛らしいお口に簡単に入りそうだ。



 エルハイミ様・・・

 可愛らしい笑顔をしてそれでいて何事にも聡明にご対処されるお方。

 まだあんなにお小さいのにものすごくしっかりされていて、時たま私より年上の方とお話しているのではと錯覚してしまう事もあるくらい。

 私より十五歳近くもお若いのに。

 エルハイミ様、きっと将来は素敵な女性に成長するんだろうなぁ。

 その頃には私はおばさんになっているだろうけどエルハイミ様のお許しが有るならばずっとおそばでお菓子を作り続けたい。


 エルハイミ様の事で頭がいっぱいになってしまう。

 なんだか体もほてってくるし、私、少しいけない気分になりそう。


 と、同僚たちが御夕食の準備で部屋に入ってくる。

 いけない、いけない。

 邪な気持ちでお菓子を作ってはいけない。

 私は残りのチョコレートもさっさとかたずけ、お菓子用の容器にしまい込んだ。

 明日のエルハイミ様にお出しするお茶が楽しみだ。


 私は本日の夕食のデザート作りに動き始めた。






 翌朝。


 私はすごい夢を見てしまい、恥ずかしくて他人には絶対に言えないような状況だった。

 

 何あの夢っ!?

 エ、エルハイミ様にご奉仕したり、あの可愛らしいお口でいろいろされてしまう夢!?


 ベットのシーツは私の汗と別の体液ですごい事になってしまっている。

 もちろん寝間着や下着だって・・・

 

 興奮しすぎたのか、鼻血も少し出ていたようだ。


 だるい体を引き起こし、服を脱ぎ、体の汗やら何やらを拭き取る。

 たまたまこの屋根裏部屋が一人しか寝泊まりできない場所で助かった。

 もし同僚と相部屋だったらこの惨事の説明がつかない。



 もしかして私って欲求不満!? 



 そう言えば最近はメイド長からもそろそろお相手を見つけなさいとか言われている。

 確かに私もそろそろそう言う年齢だし、これ以上時間がたつとエルハイミ様の教育係、ジーナ様のように・・・


 身震いをして急ぎ仕事着に着替え、自分のシーツやら何やらを洗濯しに向かう。



 と、途中で奥様に会ってしまった。


 「あらあら~ササミー、おはよう。それで、お願いしていたお菓子は出来たかしら~?」


 私はなんとなく気恥ずかしくなって洗濯籠を自分の後ろに隠し、奥様に朝のご挨拶をしながらチョコレートというお菓子が出来上がったことを話した。

 奥様もチョコレートとはなんだかわからなかったようで、早速そのお菓子を見に行きたいとか。


 うう、洗濯物が有るけど奥様の要望には応えなきゃならない。

 私と奥様は洗濯籠を持ったまま厨房へと向かった。

 

 厨房に向かう途中、私はずっと変な匂いしないかとか、なんで朝早くから洗濯しようとしているのかと聞かれないか気が気でなかった。

 

 しかし奥様はそんな私の態度に疑問を持つことも無く、厨房でそのチョコレートを見に行った。


 「こ、こちらがそのチョコレートです。」


 旦那様用のチョコレートは四角いブロックのような形にして山積みで容器にしまっておいた。

 硬化したチョコレートも包丁で力を入れれば簡単に切れた。

 なので、旦那様がお口に入れや易い位の大きさにしておいたのだが、エルハイミ様用の丸い恰好よりは無愛想になってしまった。


 「あらあらあら~、これがチョコレートというものね?一つ頂いておいいかしら?」


 奥様はそう言いながらそのチョコレートを一つ摘み上げ、なにやら呪文を唱えてからお口に運んだ。


 「う~ん、おいしいぃ!何かしらこれ!?食べたことない味だけど程よい甘さでとっても濃厚な感じがするわね~。」


 奥様はニコニコ顔だ。

 そしてうんうんと首を上下にしてから、これ持って行ってもいいかしら~?と聞いてくる。


 「も、勿論でございます、奥様。いかがでしょうか?」


 「あらあらあら~、最高にいいわぁ~。これならあの人にもしっかり食べてもらえそうだし~。」


 そう言って容器ごとチョコレートをお持ちになられて何処かへ行ってしまった。


 取り残された私は安堵の息を吐き、とにかく急ぎ洗濯をすることにした。

 


 


 午後のお茶の時間、待ちに待ったエルハイミ様へチョコレートをお持ちする時間。

 今日もいつもの中庭の東屋でお茶をされるようだ。


 給仕のメイドたちがお茶の用意をする。

 今回は私もお手伝いしながら自信作のチョコレートをお出しする。


 「へえぇ~、これがチョコレートというものなのね?なんか焦げ茶色?、栗の殻みたな色ね。」


 摘まみ上げたチョコレートをしげしげとティアナ様は見ていらっしゃる。


 「どうやって食べるの?」

 

 「そのままお口に入れてくださいましな、ティアナ。飴玉のように溶けますから。」


 そう言ってエルハイミ様はチョコレートをお口に入れる。

 そしてバラが咲いたような笑顔をされる。



 ああっ!エルハイミ様!

 なんて可愛らしい笑顔!

 い、いけない、鼻血出そう・・・

 昨日の夢まで思い出してしまいそう・・・


 悶々とする私を他所にエルハイミ様はご機嫌のご様子、良かった。



 「なにこれ!すごい美味しいじゃない!これがチョコレート!?」


 ティアナ様もご満足いただけたようだ。

 

 「どうです、ティアナ?私が言ったとうりでしょう?」


 「ほんと、凄いわね!これはお城でも食べたことないわ!」


 「それはそうですわ、秘伝の味ですもの。まだ世の中にはほんのわずかしか出回っていないはずですわ。私もたまたま書庫で珍しい本を見なければこのレシピは分かりませんでしたわ。」


 そう言ってエルハイミ様は私の私の方に向き直る。  

 

 「ササミー、ありがとうございますわ。おかげで美味しいチョコレートが食べれるようになりましたわ。これは貴女と私の秘伝の味。今後も何かの折にはお願いしますわ。」



 ああっ!!

 エルハイミ様!!

 わ、私とエルハイミ様の秘伝の味!!!

 もう、もうっ!その言葉だけでご飯三杯はいけますわ!!

 

 ・・・ごはんってなんだかわかりませんけど。


 でも、何故かそんな気分です!


 

 「エ、エルハイミ様、勿論でございます!必要とあらば何度でも作ります!どうぞご遠慮無く言ってください!!」


 エルハイミ様はご褒美のキラキラフォーカスピンク背景のバラつきで極上の微笑をくださいながら「ええ、お願い。」とおっしゃられた。



 もうっ!

 たまらないっ!!


 私はその笑顔を速攻で心のキャンバスに描き留め、二度と忘れぬように心の金庫に丁重に保管した。

  

 私は天にも昇るよな気持ちでいったん厨房に戻る。

 そしてにやにやしながら夜のデザートつくりの準備を始める。



 

 しばらくして仕込みが終わり、食器の片づけをしていると給仕のメイドが忙しいのでエルハイミ様たちの食器を下げるのを手つだって欲しいと声をかけられた。


 エルハイミ様のお世話ができるのなら何でもします!


 心の中だけそう言う返事をして早速中庭の東屋に行くと・・・




 と、桃源郷が!!!!


 な、なにこれ?

 なんでエルハイミ様とティアナ様が薄着になられて恍惚とした表情で寄り添っているの!?

 なんか少ししっとりとした感じで若干息も荒い?


 少女から立ち昇る甘い香りが鼻腔をつく。

 

 何が起こっているの!?

 なんのご褒美!!??



 動揺する私を見つけたエルハイミ様が、何故か少しなまめかしい唇を開いた。


 「ササミ~、美味しくてついついチョコレートを食べ過ぎたみたいですわぁ~。栄養価が高いから過糖になりすぎて体がほてってほてって~。」



 幾分ろれつが回っていない?

 お酒でも飲まれたかのような感じになってる?

 チョコレートってお酒みたいなものなの!!??



 「暑いですわぁ~。」


 そう言って更にお召し物を着ずれさせるエルハイミ様。

 その柔肌があらわになり、白い肌はうっすらと赤みを帯び始めている。

 本当に暑いのか首筋からは汗のきらめきがしずくとなって胸元に流れていく。


 ティアナ様も同様でふううぅぅと言いながら甘い吐息をはかれ、「ほんと、暑いわねぇ~。」と言ってエルハイミ様同に服を着崩す。

 

 私はその光景から目が離せなくなり、すでに心のキャンバス二十五枚目に突入!


 

 「エ、エルハイミ様、大丈夫なのですか??」


 そう言って心のキャンバス二十六枚目を描きながらご様子を見るためにおそばに近づく。

 すると、暑いから上着を脱ぎますわ~と言ってふらつきながら立ち上がり、足をもつれさせそのまま私に寄りかかってくる。



 きゃぁーっ!!

 

 歓喜と共にエルハイミ様を私の貧相な胸で抱きとめる。

 エルハイミ様から漂う甘い香りを胸いっぱい吸い込み、押さえる為にそのしっとりとほてった柔肌に手を回す。

 


 もう、当分手ぇあらわなぁぁいいぃい!!



 「あ、ササミ~、ごめんなさ~い。」


 目の前に紅潮したウルウル目のエルハイミ様のかわいいお顔がある!



 あっ、あたしもうダメ。


 私は興奮のあまり鼻血を出しながらエルハイミ様を抱えて後ろに倒れ気を失った。






 ふと気が付いた。


 あれ?

 ここ何処?

 あ、私の部屋か・・・

 なんか後頭部がずきずきする。


 「あ、気付いたみたいですわ!」


 目の前にエルハイミ様のお顔がある。


 ああ、これは夢?

 今日はなんて良い日なのだろう。

 


 「大丈夫?ササミー?私がふらついて押し倒してしまい、頭を強く打ったみたいですけど・・・」


 気を失う寸前を思い出す。

 途端に顔が熱くなってくる。


 「す、すみません、お手数をおかけしてしまったようで!!」


 現実に戻り慌てて体を起こす。


 「いえいえ、私の方こそごめんなさい。傷は無かったようですが一応治癒魔法はかけておきましたわ。今日はもうおやすみになってね、ササミー。エルザさんには私からお話しておきましたから。」


 そう言って手を握っていただいた。



 きゃーぁっ!!



 もう何なの今日は!?

 ご褒美の連続!?


 「それじゃ、私は行きますけど、良く休んでくださいましな。」


 そう言ってエルハイミ様は微笑んで部屋から出ていかれた。


 


 その晩、私は事もあろうかまたまたエルハイミ様のお世話になってシーツを汚してしまった。

 それはそれは激しく。

 後で声が部屋の外へ漏れていないか心配になるほどに。


 やはり欲求不満なのかしら??





 それからあのチョコレートはついつい食べ過ぎてしまうから特別な時にしか作らないようにしましょうとエルハイミ様に言われ、少しがっかりしたもののエルハイミ様と私の秘伝の味と言われ有頂天になった。


 ご要望があればいつでもお作りしますとお伝えして、今日もまたお菓子作りとデザートつくりをしている。




 そう言えば、最近奥様はお肌がつやつやになられた。

 旦那様も頻繁に奥様の元へ行かれてるとか。


 旦那様もお元気になられているようで一安心、あのチョコレートもなかなかの評判らしい。




 エルハイミ様との秘伝のチョコレートは秘密の味がするのである。

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