ウルトラマンの懺悔

 M78星雲の宇宙警察本部に無事帰還したウルトラマンは、宇宙警察幹部の厳しい面々を前にして、地球での任務の一部始終を報告した。

 そして、最後に地球人の風俗について、特に「物を食べる」事の説明に及んだのである。

「我々は光エネルギーを体表面で吸収する事によって生命維持を図りますが、地球人は食べ物を口に入れることで集中的にエネルギーを得るのです」

 地球人になってわかったのだが、彼らの味覚という感覚は実にすばらしいものだ。ウルトラマンは、地球でいつも食べていたラーメンの味を懐かしく思い出していた。

 ところがその時、彼の陶酔を破る意外な言葉が。

「実は君にスパイ容疑がかかっている」

 ウルトラマンは言葉を失って、呆然とした。

「君のように優秀な隊員には不名誉な事だが…」と、幹部のひとりが続けた。

「地球人に擬態した君は78回ウルトラマンに変身してるが、この記録によると、42回目の変身で君は怪獣と戦わず、ただその場に立ちつくしてエネルギーを消耗しただけだった。それどころか、その無益な変身のため直後に襲ってきたべべラ星人の侵略を迎え撃つ事ができず、一時、地球は危機的状況に陥ったということだ」

 ウルトラマンは厳しい職務上の追及に、困惑した。

「それについては、地球人が自力でベベラ星人を撃退し、事無きを得たはずです」

「それは、結果論にすぎない! 君はベベラ星人に賄賂をもらったか、あるいはスパイとして彼らを地球に誘導したのではないのか」

「バカな。僕は地球を愛しています。そのような事は絶対あり得ない」

「では、あの変身はいったいなんだったのだ」

 ウルトラマンは口ごもった。握り締めた手のひらが汗でびっしょり濡れて、その後はもう言葉にならなかった。


 ひとりの弁護士が別室に入っていった。そこに留置されたウルトラマンに面接するためである。

 狭い部屋の中に、ウルトラマンは頭を抱えてうずくまっていた。

 弁護士は、自分が来た趣旨を手短に伝え、この絶望的な立場から救われるためには、すべてを正直に話す事が肝腎だと説明した。その誠実な口調に、かたくなだったウルトラマンも少しづつ心を開いたようである。

「実は」と、ウルトラマンはぽつぽつと話し始めた。「大好きなカップラーメンを食べるためでした」

 弁護士は、ますます訳のわからない顔をしている。

「カップラーメンはお湯をかけて、きっちり3分で食べるのが一番おいしいのです。ところが、僕はその時、運悪く時計を持っていませんでした…。」

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