ルーザーマンション
hanaco
1.プロローグ
彼の部屋に足を踏み入れると、真っ赤な世界が広がっていた。視界を埋め尽くす、どす黒い、赤。
白い筈の、彼のシャツが、真っ赤に染まっている。代わりに袖から覗く腕は、真っ白。まるで血が通っていないみたいだ。
彼の体を流れていた血液は、今、私が立ち尽くすキッチンの床に広がっている。
ああ……だめだ。血は、体の中になくちゃいけないものなのに。こんなに流してしまったら、体が――彼が――動かなくなってしまう。
いや、違う。もう、動かない。微動だにしない。
だって彼は、ここに転がって、真っ赤で、真っ白で。私はただ見下ろすしかなくて――
彼の肌が白いのだ。
彼の部屋の。キッチンの。床に横たわる彼を見て。彼がこの先、永遠に、動かないのだと知った私は。それ以上、彼に近付くことができなくなってしまった。
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