第12話それでは勝てない

 【ネフィル視点】


 今、目の前では主犯である貴族エルフとワタルさんが交戦しています。


 私の仕事は目の前の魔法陣の解除です。

 しかし、その進捗は九九パーセント終わっています。

 自分の作成した魔法陣です。改変されているとは言え、解読するのは難しくありません。開始数分で終わるはずでした。


 でも、残り一パーセントが足りません。

 この一パーセントはあの貴族エルフから奪わない(・・・・)といけません。

 最初は、ワタルさんやミリヒルさんが自然と取ってくると思っていました。

 しかし、ミリヒルさんは上階で盗賊のリーダーと交戦を始め、エルフの貴族は絶対防御魔法なんて無茶苦茶な魔法を使ってきます。


 あの魔法を突破する案……一つあります。

 ワタルさんのドが付くほどの魔法音痴なところで、この案を気づきました。

 普通の人間なら持っていない物を私は持っています。最近、手に入れました。


 しかし、これはリスキーです。

 カールイさんやワタルさんに頼みましょうか?


 いいえ、駄目です。お二人とも手一杯な状況で他人に頼って神に祈るなんて出来ません。

 先の解体室で何も出来ずに座っているだけの私には戻りたくないです。


 魔力も無く、魔法も使えないワタルさんがエルフに立ち向かっているんですから……私も勇気を出して戦わなければ。


 普通に立ち向かっては、勝てません。

 まずは、敵に気付かれずに接近する必要があります。


 この小部屋を見渡してみると天井に通気口が見えます。使えそうですね。


 ワタルさん……もう少し頑張ってください。


 私は、先程の契約で貴方に全てを捧げる覚悟をしました。ここで貴方が死ぬ姿なんて見たくありません。貴方の戦う姿を見ていると、『もう一人の私』も疼くんです。


 必死に戦う男性の姿はかっこいいです。

 あの貴族エルフに奴隷扱いされても、戦う貴方の動機は分かりませんが、貴方に魅力を感じます。


 この責任はいつか取って貰いますよ?



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