前髪を切る

 前髪を切った。前回切ったのはそれほど前ではない気がするのに。

 前髪を切る行為は儀式にすら思える。切り終えた時に見たくない物が目の前に現れる気がする。ただのゴミになった髪の毛の長さは、時の流れを物体化していた。途端に汚く思える自分の変わり身の早さが、とても気持ち悪い。

 もし、散髪が入信儀式だったなら。ざくりと繊維を裁ち切る鋏は、洗礼式でいう盃か?ひらりと落ちていく髪の毛は聖水か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る