デンファレ

@tonbo-shiki

プロローグ


 雑音。雑音。雑音。雑音。

 耳を塞がないと、とても息苦しい。世の中に溢れる雑音は、私の心を苦しめる。音を聴くと何故かいつも苦しい。胸を押さえて、吐き気がして、頭も痛くなる。

 

 ────私はそこで、彼女に出会った。彼女の歌声に───。

 

 彼女の声は透き通っていた。雑音なんかじゃない。彼女の声を聴いた途端、今まであった息苦しさが消えていった。

 

 学校の授業で、たまたま先生が流したあの曲。嘘みたいに、私の耳を通り抜けていく音色。

 病院でも、歩き道でも、どこでもイヤホンを耳にして曲を流す。もはや私は彼女の歌声無しでは心地好い生活が無くなる程に、のめり込んだ。

 

 

 ─────彼女の歌声は、美しい。

 

 

 ***

 

 

 白。灰。黒。

 私の目に見える色はこの3色を基調とした色だけ。他には何も見えない。皆が綺麗だと言う色も、私にはただの息をしていない色にしか見えなかった。

 綺麗ってどんな色?青って、赤って、黄色って────。ねぇ、皆の見てる色ってどんな色なの?

 

 ────それを教えてくれたのは彼女だった。ただ1人、私はその子の瞳の色だけを見ることができた。

 

 初めて見た、蒼色。青って言っちゃダメな程に彼女の目は鮮やかだった。

 

 私はその瞳に、彼女に恋をした。

 病院でも、一緒に歩く道でも、彼女の目に吸い込まれそうになる。

 彼女に会って、あの声を聴きたい。あの瞳を見たい。

 


 ──────これは、私が叶えることができなかった、恋物語。

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