異能特務隊〜災厄の異能力者

@kudryafuka

第1話最強の新人と災厄の邂逅

 どうして、こんな痛いことをするの?なんでお母さんを殺そうとするの?街の皆を殺していくの?


 それを僕は理解ができなかった。どうしてこんなに人を殺せるのか。


 異能を使う殺人鬼に、殺されそうなお母さんを身を呈して守ろうとした。


 殺人鬼の攻撃に僕は目をつむって守りに入ったが、衝撃どころか触れることすらなかった。


 ベキベキッという音がしたので目を開けてみると、そこには僕と同じぐらいの背丈の男の子が立っていた。


「ごめんね、遅れちゃって。でももう大丈夫、後は全部任せてよ」


 彼はすごかった。街の皆を襲った殺人鬼をみんな倒した。彼が指を鳴らすと殺人鬼を全て蹴散らし、敵の攻撃は全て僕達に届くことは無かった。


 ただ僕は気になった。何故あの時、溢れるばかりの涙を流していたのか。


 ✕✕✕


「うわぁ、東京って大きなビルばっかだなぁ」


 異能特務隊第四課が設置されているビルの中に、身長が低い男の子が入ってきた。


 その子は今日から四課に配属される少年だ。


 赤く綺麗な目はビルの中を見渡してソワソワしている。


 元々小さな身長をより小さく見せるように縮こまりながら、受付の方に向かう。


「あのーすみません、異能特務隊第四課はどこにあるでしょう?」


「すみません、第四課に向かうには確認が必要でして、どのようなご用件でしょうか?」


「え、はい!あのっ」


 質問に質問を返され、どのように喋っていいのかわからないのか、あたふたして困っている。


 それを見てあらたはソファから腰をあげる。


美帆みほちゃん、その子は僕達が待っていた子だ」


「あらたさん!もしかしてこの子、新しく配属される新人さんですか?」


「そうそう、じゃあこの子は預かっていくよ。あ、美帆ちゃん。ご飯の件についてなんだけど」


 新は受付の女の子にアプローチをかける。


「い、行きたいのは山々なんですよ?でもですね、京香きょうかさんが怖くて無理です」


「京香さんは構ってくれないからいいんだよ〜お願いだよ〜」


 アラタが必死にアプローチをする中、アラタの後ろから呆れた顔をした女性が来る。


「はぁ、またあんた美帆ちゃんに絡んでるの?」


「京香さんが構ってくれないからでしょ〜。その点美帆ちゃんはちゃんと応えてくれようとするし可愛いよね」


「私が可愛くないと遠回しに言ったよね?」


「すいませんそういうつもりじゃないんですええ、悪かった!ものすごく謝るから!痛い痛い!烈花れっか君!ついてきたまえ!美帆ちゃんまた今度ね!」


 アラタは左腕を思いっきり掴まれて引きずられる。


 その様子を見て美帆は苦笑いをしつつ手を振って見送る。


 烈花はその後ろについて行く。


「あのー新さん?」


 烈花の呼びかけに京香は握りしめていた手首を離す。


「すまないね烈花君。少々見苦しいものを見せたよ」


「見苦しいどころかこれから後輩になるかもしれない子になんてもの見せるのさ」


「京香さんがやったんだろ!?まあいい」


 アラタはエレベーターのボタンで十二階を押す。


「改めて、僕の名前は佐々木新だ。よろしく」


「私は東雲しののめ京香です。こんな人でも一応すごい人だからよろしくね」


「は、はい!自分は古城ふるき烈花、十八です!何もまだできないと思いますがよろしくお願いします!」


 新入隊員の鏡のような、綺麗なお辞儀と大きな声で、アラタはニヤリと笑った。


「若いなぁ。いいねこの感じ」


「何言ってるの、あんたもまだ十八でしょうが」


「ええ!?新さんはいつから隊員なんですか!?」


「十歳だよーん」


 両手を広げて十をアピールする。


「そんな年齢から隊員になれるんですか?」


 烈花の疑問はもっともだ。隊員の募集は表向きには最低年齢が十八歳からと決められているからである。


「僕はスカウトされた感じだから。ここ最近強い異能力者少ないからね。あ、僕のことは階級気にせずタメでいいよ!」


「ええ!?そんなのダメですよ!」


 律儀な烈花にアラタは苦笑する。


「偉いなぁ全く。お、じゃあ乗ろうか」


 エレベーターに乗って十二階を目指す。


「これから烈花君は軽い面接があるから」


「め、面接ですか!?」


「ああ、そんなに肩に力をいれなくていいよ。書類でこっちもある程度君の情報は理解してるからね。後は人柄を見るだけだよ今後のために」


「でも真面目に受けてね?新みたいにふざけてたら流石の課長も落とすから」


「が、頑張ります!」


 烈花はどこか緊張している雰囲気が出ている。チラッとアラタが横を向いてみると烈花もアラタの方を横目でバッチリ見ていた。


「どうしたんだい?」


「つ、つかぬ事をお聞きしますけど」


「そんな堅くならなくていいよ。どうしたんだい?」


「新さんって“災厄”だったりしますか?」


 災厄とは強い異能力者につけられる二つ名である。


「・・・・・・着いた。その話はまた今度だ」


 アラタは何も言わず、オフィスに招待する。


 そこに広がっていたのは拉致現場。


「おいお前!何をしている!」


 拉致現場にいち早く気づき、手首に手錠をかける、犯人に声をかける。


「チッ!もう帰ってきたか!」


 そう犯人が言うと、手に持っている拳銃を使い、手錠をかけた女性の側頭部につける。


「おい動くなよ!?俺はテロをしにきた!ここを爆破するためにそこに爆弾を置いてある!少しでも動いたらその爆弾を撃ち抜いてお前らもろとも死んでやるからな!」


 烈花の方を見ると、すでに戦闘態勢に入っているのか少し前屈みになっていた。


「烈花君、落ち着け」


「わかってます!でも人質がいるんですよ!?」


「だとしても君の能力ではここを火事にするだけだろう?」


 烈花の能力は火を作り出して操る能力。建物内の戦闘にはかなりの不向きである。


「大丈夫です。自分はここで能力をつかうほど馬鹿ではないです」


「おいうるせぇぞ!」


 銃声がオフィスに響く。


 烈花を庇うように前に出たアラタは赤い液体を胸あたりから流す。


「ぐぁあああ!」


 膝をついて痛がる。


「大丈夫ですか!?新さん!なんで僕のために」


「お前は相手を見てろ!俺は放っておけ、あとは任せた、よ」


 アラタが横向きに倒れ込む。


「許さないぞお前」


 爆弾から、ピッピッと音が鳴っている。


「時限爆弾なのか!?」


「もちろんだ。お前も膝をついて両手を地面につけ。こいつを殺されたくなければな。おい裏に隠れている女!お前こっちに来いよ!」


 入口の裏側に隠れていた京香が呼び出される。


 言われるがまま、京香はすぐに出てくる。


「お前も死ぬか?」


「嫌だわ」


「彼女は・・・・・・死なせない」


 倒れていたアラタがよろよろしながらも立ち上がる。


「うるせぇ」


 二度目の銃声が響き、アラタは倒れた。


「死ね」


 三、四の銃声に合わせて京香も倒れ込む。地面には血が流れていく。


「お前ぇえええ!」


 烈花は炎を出さずに拉致犯に突っ込む。


「それは動きが単調すぎるぞ」


「それは違う!」


 近くにあった大きな机を両手に持ち、相手を押し倒す。


 犯人は倒れ込みながら烈花に囁く。


「俺だけに構っていていいのか?」


 その言葉で、烈花はすぐに爆弾の方を見る。


 残り時間、あと二十秒。


「クソ!」


 烈花は押し倒してからすぐに立ち上がり、時限爆弾を手に持つ。


「少し怖いけど、やるしかない」


 そう言って烈花が足から炎をゆらりと出す。


 炎があらぬ方向に向かず、ただ彼の足を流れるかのようにまとっている。


 時限爆弾は残り数秒、それが彼を焦らせる。


「はぁああ!」


 窓ガラスを飛び蹴って空で爆弾を爆発させる気だったのだろう。


 それをさせる前にアラタは殺られている演技をやめて烈花の前に出て足を掴む。


「よし、合格だよ」


 アラタが笑顔で言ったその言葉に、烈花はただ呆然とした。

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