愛がほしい

一子

『幸せ』

君が『幸せ』の存在を否定して、そのくせ私が『幸せだ』と言い続けることだけに救われていると言うからそう言い続けてたのに。それを言えなくさせたのは君だったね。

いつからか君は『幸せ』の存在を肯定し始めたらしく、その存在の曖昧さやその胡散臭さを、死んだような目で睨みつけるようになったあたしは、色んなことに対して疑い深くなった。

愛だの恋だの美しくあるのは物語の中だけで、理想の優しい友だちも、勇敢な主人公もやっぱりフィクションの中だけだった。

夜の空を見あげれば、眩しく輝く星たちが冴えない私をさらに惨めにさせて。最愛の恋人は何万回と私に涙を流させた。流れ星になれるわけでもないその涙は、ただ乾いてどこかへ消えた。

誇れるものがあるわけでもなく、いくつかのコンプレックスを抱えながら歩いた。誰も心から愛してはくれなかった。愛した分だけ、自分の心が枯れていくだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛がほしい 一子 @aaaaaaaaaaaaaaaaaa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る