冷たい部屋

一子

冷たい部屋

目を覚ますと、薄暗い部屋にカーテンの隙間からほんの少しだけ白い光が差し込んでいるのが見えた。私はそれを嫌った。薄暗い部屋で死んだように眠っていたかったのに、その光が部屋の雰囲気をぶち壊してくれた。凍りつくような空気、春はどこへ行ったの。どうしてもう3月なのにこんなに寒いの。白い息を吐いた。暖房は面倒なので付けないでいた。いや、寒さの中しばらく感傷に浸っていたかったからなのか。

昔好きだったあの人をもう思い出さなくなっていた。これからの私の人生にはなんの関係もなく思い出す意味もない。

昔嫌いだったあの子ももう今はどこで何をしているのかもわからない。

あの時はもうどこにも残っていない。本当にあったのかどうかもよく分からない。だけどその証拠に今がある。今のどこかに存在する過去の痕跡がその過去を証明してくれる。過去の残骸が今も散らばっている。

だから過去は今と同時に存在し続ける。過去に受けた傷は今でも残っているし、過去に犯した罪はいつまでも時効にはならない。

今も消えない何かを見つめて、なんだか自分がバラバラになって崩れてしまいそうな感覚に襲われた。どうすることも出来ず布団を頭まで被った。

もう二度と外へは出たくない。もう二度と目覚めたくはない。そんな気持ちで再び眠りにつくのを待った。

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冷たい部屋 一子 @aaaaaaaaaaaaaaaaaa

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