第73話 新キャラ登場


 月夜野に……瑠に会いたい……。


 高麗川の家から帰る途中、思い浮かべるのは瑠の事ばかり。


 高麗川は言った……「俺達の出会いは間違ってる、俺の目を覚まさせる」、そう確かに言った……。でも……高麗川に何を言われても……今の俺は瑠が、瑠の事が好きな事に変わりは無い、俺の気持ちは揺るがない……って、そう思っていた。


「うう……瑠に会いたい……」

 今、俺達は警告無視により1ヶ月のシステム使用停止中、停止期間中でもスマホを監視されている為一切連絡が出来ない……まあ、直接会うのは禁止されているわけではないし、家の電話や公衆電話等から連絡を取る事も可能……抜け道はいくらでもある……。


「やりたくない……それをしたら高麗川さんの言う通りになる気がする……」

 でも……瑠は俺にそう言った……正々堂々とシステムを使うと……。

 

 勿論学校では会える……それが唯一の救い……でも……俺達の関係は学校では秘密……って事にしている。


 そもそも1年限りの付き合いだった。だから誰にもバレない様にしようって……でも……もう来年の事は考えていない、瑠だってそう思っている……筈だ。


 元々間違ったカップリングだとお互い思っていた、だから1年で解消しようってそう決めていた……でもそれはもう…………あれ?


 解消したよな? あれ? してない? え?


 ……そうだった……お互い付き合おうって……言っただけだった……。


「瑠って……俺の事……好き……なんだよな?」

 システムって、そこの所が曖昧な気がする。どこからが恋人になるのか今一わからない……。

 自分達の意志とはいえ、システムに強引にくっ付けられて……デートさせられて……当然一緒にいれば恋に発展する確率は上がる……元々恋人が出来ない二人が恋人が欲しくて利用する物なんだし……。

 

『相性ではなく……妥協……』


 高麗川に言われたせいなのか? そんな文字が頭に浮かぶ……。


「くっ……やっぱり高麗川は悪魔だ……魔王だ……」

 自分の中で、瑠への信頼がほんの少し、ほんの少しだけ揺らいだ……。

 俺は瑠が好きだ……でも瑠は本当に俺の事が好きなんだろうか? 来年システムの期限が来ても……好きでいてくれるんだろうか?


 もしかしたら……再登録なんて……。

 システムの利用は高校生だと1年間、その期間が終わればカップルは婚約するか、システムの利用をもう1年継続するか、解消して再登録するか、利用終了するかのどれかになる。

 

 勿論継続、もしかしたら……婚約? だと思っていた……でも、そんな話は一切していない……そう思っていたのは俺だけ?


 そんな事で揺らぐ俺達の関係……まだまだこれからって時に、二人っきりで会えないのは辛い……。


 

「ただいまあ……」


 そんな事を思い、少々落ち込みながら家の扉を開けた……あれ? ただいま?

 誰もいない筈なのに……俺……何でただいまなんて……言ったんだ? 誰に対して? 日頃帰っても誰もいない、両親は仕事の関係で土日関係なくほぼ毎日夜はいない。

 普段は言わない……なので口癖でもない……だとしたらなぜ?


 そしてそれは直ぐにわかった……気配がする……家の中から気配が……。


 瑠? いや、そんなわけはない……電気もエアコンの付いていない……そもそも合鍵は持っていない、勿論父さんでも母さんでもない……今日も仕事で遅い筈だ。


「泥棒?」

 俺はゆっくりと音を立てずに廊下を歩いた……気配は居間から漂う……間違いない……誰か居る。


 俺は居間の扉の前で一旦深呼吸し、どんな奴にでも対抗出来る状態、臨戦態勢を取りつつ居間の扉を一気に開けた。


 すると扉を開けた瞬間、地を這う様に何かが俺に向かって突進してくる。


 これは……高速タックル……。


 俺の子供の頃の得意技……これで全国迄行った……俺の必殺技。


 そしてこれを使えて、尚且つここに居る人物は一人しかいない!。


「甘い!」

 俺はそう言うと、昔とった杵柄宜しく、地を這う様に俺の足元に突撃してくるそいつの頭を左手で止めつつ、ぐるりと身体を入れ替え背後を取ると上から潰す様にそいつを床に倒し押さえこんだ。


「きゃ!」

 小さな悲鳴が俺の下で聞こえる……そして俺の手にはふにゃりとした感触が……え? これって……いや、でも……。


「……ふぎゅうううぅ……瞬兄ちゃんの……エッチ!」

 俺の下で完全に押さえ込まれている従妹のさくらは、俺に向かってそう叫んだ……。






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