第71話 距離と嗜好
「とにかく君は僕のヒーローなんだ……僕は君の事を瑠よりも遥か先に知っていた、憧れていた、大好きだった、そして今僕は君の事がもっともっと好きになっている」
ベットの上で正座をして俺に向かって真っ直ぐにそう言う高麗川……。
こいつはいつでも真っ直ぐに言ってくる。何でも真っ直ぐなんだ……行動も考え方も、俺や瑠とは正反対な性格、でも、俺はそんな高麗川のその真っ直ぐな性格に少し憧れを抱き初めていた。
もし俺があの時……高麗川と出会っていれば……競技を止めなかったんじゃないかって……。
「……いや、でも……それはテレビで見ただけだろ? しかも子供の頃の俺だろ? それで好きって……なんか違うんじゃないか?」
それは俺自身を好きって言うよりテレビの中のアイドルを好きだっていうのと同じ事だろ?
「あははは、君がそう言うと滑稽だよ、君はシステムに、機械に言われて瑠と付き合ったんだろ? それまでは瑠が大嫌いだったんじゃ無いかな?」
「そ、それはそうだけど……」
「マイナスからのスタートだろ? 僕よりも遥かにマイナスだったんじゃ無いか?」
「そりゃ……俺は高麗川の事殆んど知らなかったし」
「それなのに、機械に言われて信じた、いや、信じさせられたんだろ? 相性が良いって」
確かに俺は瑠が大嫌いだった……マッチングされた時疑問に思った……本当に相性が良いのかって……。
「人の相性なんて機械にわかるわけ無いんだ……占いと一緒だよ、君達は騙されているんだ」
「それだ……俺はそれを聞きに来たんだ……騙されているって……一体システムの正体って、問題点ってなんなんだ? 高麗川は、お前は何を知っているんだ?」
俺がそう言うと高麗川はニヤリと笑いベットから立ち上がる……そして陸上だからなのか、机まで綺麗な歩き方で向かい引き出しから1枚の紙を取り出す。
「これがシステムの正体だよ」
ベットに戻りまた俺の横に腰を下ろしてそう言うと、高麗川は俺にその紙を見せた……そこには……ただただ数字の羅列が記載されていた。
「これってなんだ?」
俺がそう言うと高麗川は魔王が最後の一撃を放つ前の様にニヤリと笑う。
「これが今年のマッチングシステムに費やしている国の予算、これが今までのトータルの予算だよ」
「……こ、こんなに?」
いちじゅうひゃく……そこには0が10個以上並ぶ数字が記載されていた。
「そうさ、これだけの予算をかけている……これはもう綺麗事じゃないんだ……システムは絶対っていう事を皆に意識させているんだ。成功率もそうさ、意図的に90%以上にしている。もうこれは洗脳って言ってもいい」
「いや……これは……発表されている資料と違わないか? ニュースとかではここまでの予算は……」
「システムは本当にそのシステムに使っている直接的な予算しか発表していない……これは全ての関連事業や複合施設、マッチングシステムに関わる全企業その他関連……その全ての予算の合計だからさ」
「……それって普通はわからないよな? なぜ高麗川はそれを知っているんだ?」
直接的な予算ではなくその他関連の予算迄、システムに関わる全ての予算なんて膨大過ぎてわかるわけない、それこそシステムの入っているコンピューターが複合施設になっていればそのビルの管理費とかビルが賃貸だとしたら家賃とかはわからないわけだし。全てのって……。
「…………兄貴が……お兄ちゃんが……システムに関わっているんだ……」
「…………は?」
「……兄ちゃんは全部知ってるんだ……システムの表も裏も……」
「いや……それってシステムに関わっている人がシステムを利用するってまずいのでは? それに確か高麗川の兄ちゃんは趣味を偽って提出したとかって……」
「……兄ちゃんは趣味だけじゃない……全部偽ってシステムに申告している……自分の好きな人とマッチングされる為に……」
「……は?」
「兄ちゃんは好きな人がマッチングシステムを利用するって聞いて、システムを悪用したんだ。どうすればマッチングされるかを知っているから」
「…………ええええええええ!」
それってバレたらヤバい奴なのでは?! つまり高麗川の兄ちゃんはシステムのプログラムに精通し、さらに相手の資料迄見れる立場って事なのか?
「……バカ兄貴が、捕まれ……」
「いや……でもシステムはAIを使ってるんだろ? AIって機械学習やらで既に人知を越えてるって言ってたけど」
将棋なんかなぜそう指すのか開発者もわからないとかって言ってた気がしたけど?
「距離さ」
「距離?」
「システムは相性よりも距離を重視しているんだ」
「距離……」
俺と瑠は家も遠くない、学校は同じ……しかも常に隣の席……まあ隣の席はマッチングシステムが知ってる筈はないけど……いや……ひょっとしたら先生が学校のパソコンに席順なんかを入力している可能性があるかも。
「いくつかの趣味嗜好が合っていれば遠くの人よりも距離が近い人とマッチングする」
「ああ、……でも……それはアナウンスされているよな」
「近ければ近い程さ、近ければ遠くの人よりも遥かにマッチングされやすい、だから兄貴は家を出て引っ越した……マッチングされたい人のマンションの近くに……」
「はあ? そりゃもうストーカーじゃないか?」
「捕まれバカ兄貴……」
次から次へと高麗川から新事実が告げられもう俺はパニック寸前の状態だ。
つまり……俺と瑠がマッチングされた理由って……趣味と距離だけって事なのか?
【あとがき】
フォロー、★レビュー、♥エピソードに応援ありがとうございます。
引き続き応援よろしくお願いいたします。
特に★レビューをよろしくお願いいたします。
レビューといっても星の数だけ入れて頂くだけで何も書かなくても大丈夫です。
現在他にも作品更新中です。
https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054884994656
妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ。
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義理の妹が彼氏の僕を女装させイチャイチャしてくる。
こちらも合わせてよろしくお願いいたします。
短編も出しております。
年末年始、暇な時間に是非(O゚皿゚O)
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