第18話 カップル解消も……。

 

「あはははは、2割引き~~3割引き~~あはははは」


 タイムセールは終わりに近づいていた為、大幅値引きの商品はあらかたなくなっていた。くっそお、あいつを監視していたあの10分を返せ。

 恐らくまだいるであろう彼を何度も頭の中でナイスボートする。


 後ろに何度も彼の気配を感じるも、私は構わず商品を物色、お気に入りキャラのお宝アイテムを商品篭に放り込んで行く。


 ああ、至福の時……。


 そしてタイムセールの終了と同時にレジに並び会計を済ませた。


「ああ、満足~~~~!」

 身震いする程買い込んだ商品を抱え私はフロアーを出た所で思い出す。


 「あ! 彼の事を忘れてた……」


 間抜けだ……でも仕方ない……お宝を前にして他の事を意識するなんて、出来るわけないよ……オタならわかってくれるよね? 


 とりあえずまだ近くにいる可能性も考え私は急いでエレベーターに飛び乗り外に出た。


 しかし彼の姿は見えない……私は彼が他の店にいる可能性も考慮して乙女ロードの店舗を回った。しかし……。



「あはははは、あははははははははは」



 彼どころじゃ無かった……ここにいて私が他の事を意識できるわけないって言ってるでしょ!


 結局暗くなるまで(途中執事喫茶で1時間いたけど……)各店舗を回ったが、彼とは会えなかった……。


 一瞬電話する事もかんがえたけど……それはさすがに危険と控えた。


 私のオタバレは万が一にでも許されない……彼が同じ趣味そしてBLやコスプレに理解があるならそれも考えるけど……でも……まさかね……。




 ◈ ◈ ◈ ◈ ◈



「やべえ……」

 俺は下の階に降りてBL同人を鑑賞していた。周囲は殆ど女子ばかり、しかし意外な事にそれほど疎外感はない。出ていけっていう様な視線も感じない。

 かといって歓迎されている感じもしない、至って空気だ。


 まるでクラスの中の俺のようってほっとけ!


 その馴れている空気の中……BL同人を手に取る。裏表紙に見本が付いてるのでそれを鑑賞する。


「思ったより嫌悪感はないなあ」

 当然それで興奮はしない、でもなんだろう……中には読んでも良いかもなんて作品もある。

 粗筋なんかを読むと普通に恋愛物だったり、中には可愛い男子もいるので、脳で女子補完をすれば普通に……おっと、失礼。


 とにかくBLに嵌まりはしないものの、こういうのを好きになるって感覚はわかる気がした。


 そして俺はお店を後にし駅に向かいながら考えていた。


 遂にBLも行けるなんて……これだけオタ趣味じゃあ月夜野に嫌われるのもわかる……隠しているものの、1年近くに居れば何か感じる事はあったんだろう、だからあれだけ俺に攻撃的になっていたんだなと再認識した。


 オタ趣味を理解してくれる彼女と出会えるかもなあ……なんて思いでシステムを利用したけど……やっぱり、いくらシステムが優れているとはいえ、そこまでの考慮はしないんだろうな……。

 

 オタバレしないようにしながら学校で探すしか……俺に彼女を作るチャンスなんて……ないのかも知れない。




◈ ◈ ◈ ◈ ◈




 そして俺たちは中間試験の期間に入った。

 

 勿論学生は勉強優先だ。システムにその旨申告すれば、デート等はテスト期間免除となる。


 その二週間の間、俺と月夜野は喫茶店でも会っていなかった。

 学校で隠れて話すのも、色々と危険だし、そもそも俺はまだしも、女子に人気の月夜野が、友達から抜け出すのは容易ではない。


 だが俺は月夜野に聞きたかった……あの日の事を、そして好きな人がいるのかって事を……



 悶々としながらも勉強は続け、そして今日が試験最終日。


 最後の科目の終了間際


『『トントントン』』


 同時に3回机を叩く音がした……俺と月夜野が同じタイミングで『放課後喫茶店へ』というサインを出した。


 お互い同時に向き合い一瞬目が合う……そしてまたテスト用紙に視線を戻した。


 チャイムがなり中間試験は終了した。同時に皆の緊張がほどけるのがわかった。

 しかし俺の緊張は続いていた。いや試験以上に緊張している。


 今から久しぶりに月夜野と喫茶店に行く……そして俺は一つの覚悟を決めていた。


 場合によっては今日、俺と月夜野のカップリングは事実上解消されるかも知れないから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る