五里霧中2

 真昼は睡眠中の夢が好きではない。ろくな夢を見たことがないのと、たまに目が覚めなくなりそうになるからだ。一番嫌いな夢は、眠る自分が見える夢である。

 寝ているはずなのに起きている自分がいて、全く同じ格好で、自分を真上から見下ろされる。ひどく嫌な光景。しかも自分は、目も鼻もないのっぺらぼうで。見ていると、もう戻れない気がする。でも最近は必ずと言っていいほど、引き戻してくれる【声】がやってくるのだ。


「真昼、起きろー」


 時には息を切らせた。時には呆れかえった。時には暖かさを含んだ。時にはどこか尊大な。そんな声がすると、真昼は目を閉じる。そしてもう一度開くと、元通りの世界に戻っていて。


「ありがとー」


 自分を覗き込む誰かに笑いかけるのだ。

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