第2話 色々試してみよう
『ダンジョン権限が付与されました。スキル【帰還】を獲得しました。スキル【ダンジョンマスター】を獲得しました。』
どこからか、声が聞こえてきた。
この世界にはどうやらスキルといった概念があるらしい。
少しだけワクワクしてきたよ。
折角ダンジョンマスターにもなったんだし、ダンジョン内に王国でも作ってみるのもいいかもしれないね。
……って、あれ?
もしかしてこれだけしか説明は無いの?
ダンジョンの説明というよりは、スキルを獲得した事しか聞いてないんだけど……
おーい、チュートリアルはいつになったら始まるんですかー?
静寂が流れ、俺はこれ以上の説明は望めないという事を悟った。
つまりはこれから何のアドバイスも無しで、ダンジョンマスターをやっていかなければならないという事だ。
スキルを獲得しましたとか言われても使い方すら知らないんだけどな……
これじゃあここに来る前と何も変わっていないような……
これから俺はどうしたらいいの?
……よし、何もせずに悩んでいても仕方がないしね、頑張ろ。
自分で暗中模索していくしけばいいんだからね。
試行錯誤していくというのも嫌いではないし。
ということで、まずはダンジョンに魔物とかを作ってみようかな。
とは言ってみたものの、ダンジョンの操作方法を知らないんだけど。
もしかして、「出てこいダンジョン画面」って叫んでみたら発動する世界なのかもしれない。
まあ出来ることなんてそれくらいしか無いし、間違っていたとしても誰にも見られないから恥ずかしくはない。
試してみよう。
「ステータスオープン!!」
―――――――――――――――――――――――
クラス:影
MP :217/217
存在感:6/6
通常スキル:
【魔力探知】【振動探知】
固有スキル:
【影移動】【
【ダンジョンマスター】【帰還】
耐性スキル:
【物理耐性】【魔法耐性】【状態異常耐性】
称号:
【剣聖】
―――――――――――――――――――――――
もしかしたらとは思っていたけど、本当に開いてしまうとは……。
でも、ステータス欄にMPと存在感しかない。
これってステータスとして機能していると言えるのかな?
称号に全く見に覚えの無い剣聖とかもあるし……
それよりも、存在感って何?
存在感があった所で何の役にも立たなさそうなんだけど……
ゲームのプププみたいなものなのかな。
でもまあ、良かった。
俺が結構な数のスキルを持っている事が判明した訳だし。
スキルに【実体化】というのがあったし、実体化が出来るんだったら話は早い。
今までは何も出来なかったけれど、これからは俺自身で活動していく事が出来るって事だからね。
先ずは使い勝手を調べて、それからあの狼に復讐に行こうかな。
「実体化っ!」
何も無かった空間に、影が伸びていき、そして段々と体が構成されていく。
徐々に視界も開き初め――
って、眩しいっ!!
でも久しぶりに目を使って景色を見ることが出来た。
俺が今いる場所はダンジョンと言うよりは、どちらかというと神殿の様な場所だった。
立方体の様な部屋の中で、俺は一人立っていた。
そして何故か分からないが、実体化した俺の肉体は女性のそれであり、随分と肉付きが良かった。
これが俺の本体なのか? TSしてしまったのか?
でも、けしからんお胸ですね、ふにふにふに。
そんな馬鹿みたいな事をしていると、直ぐに体が消え始めて――影に戻ってしまった。
実体化していられる時間はかなり短めの様だ。
これだと殆ど使い道にならなさそうだな……
MPが尽きたのかもしれない。
MP :217/217
存在感:0/6
そう思って確認してみると、必要が無さそうだと思った存在感が0になっていた。
なるほど、実体化すると存在感が減っていくのか。
実体化している時間は大体6秒くらいだった気がするから、一秒毎に1くらい減っていく感じなんだと思う。
ということは……存在感を増やしていけばいつかは常時実体化出来そうだ。
これからは存在感を増やす事を目標にしよう。
まあどうやったら増やせるのか分からないのだけれども。
……存在感か、魔王様プレイでもしたら増えるのかな?
道徳的には駄目そうだけど、例えば街を襲撃したりすれば増えそうな気はある。
現実の存在感とステータス上の存在感がリンクしているのかは分からないけど。
よし、次は個人的な期待出来るスキル【
俺の灰色の脳細胞がこう囁いていた、これはドッペルゲンガーを作り出すスキルなのだと。
つまり、実体化なんて使えなくても大丈夫なのだと。
よし、使ってみよ。
「
『発動可能な対象が選択されていません。』
ん? どういう事???
俺に対して発動出来ない感じなのかな?
「
『発動可能な対象が選択されていません。』
あ、はい、駄目みたいですね。
影に使えないなら二重の影って名前詐欺が酷いと思うんだけど……
まあそう都合良くはいかないって事だね。
じゃあ次に試すのは……
個人的に期待できるスキルNo.1、お待ちかねのダンジョンマスター。
「ダンジョンマスター」
『ダンジョンコアとの距離が離れ過ぎています。』
そこまで離れては居ないんだけど、一々細かいな……
影の状態で、俺は水晶にベタッと乗っかった。
では今度こそっ。
「ダンジョンマスター」
―――――――――――――――――――――――
ダンジョン名:影の迷宮
守護者:0(召喚可)
広さ:最小(拡張可)
階層数:1(拡張可)
形状:神殿
ダンジョンポイント:500
―――――――――――――――――――――――
なるほど、水晶の上に画面が浮かび上がって操作出来る様子だった。
それにしても、影の迷宮とは中々ネーミングセンスがいい。
あと心做しかステータス画面よりは気合が入っているの様に感じた。
えっと、召喚可ってなってる所だけ色が違うからそこをタップすれば良いのだろうか?
いきなりフェンリルとかそんな感じの魔物を召喚出来たらいいんだけど……
ポチッと。
―――――――――――――――――――――――
召喚可能守護者一覧
スライム:500DP
ゴブリン:1000DP
下級妖精:2500DP
下級悪魔:2500DP
etc……
―――――――――――――――――――――――
あれー? 召喚出来る魔物のラインナップ、ショボくない?
明らかに序盤に出てくる雑魚敵って感じな気がする。
そしてその割には消費DPが物凄く高いんじゃないかな?
これに関しては初期DPが少ないだけなのかもしれないけど。
取り敢えず召喚できるのはスライムだけだし、スライムをを召喚してみるかな。
ぷよぷよぷよ、ぷよぷよぷよ、ぽよよん。
そんな雰囲気で動く水色のボディ、まさにスライムだった。
枕にして寝てみたいなー!
まあそんな事をする体が無いんだけど。
取り敢えず今度こそ【
「
おおっ、予想した通りスライムの形に変身できた。
今まで影だっただけあって、スライムになっただけなのに感慨深い!
ついに自分の体を動かせる様になった!!
あんまり早くはないけれど、弾性で跳ねていく感じが心地良いし。
案外スライムというのも悪くはないのかもしれない。弱そうだけれども。
『スライムくん、聞こえていますか? 俺はこのダンジョンのマスターです。』
念話を使ってスライムに話掛けてみた。
ちゃんと聞こえてるかな?
「はい、聞こえてますよ。というかマスター、普通に喋れますよー。」
「あ、本当だ。」
スライムなのに喋れるのね。
スライムってそんな魔物だったっけ?
もしかしてこの世界の魔物はゴブリンとかも平気で喋るのかな……?
この世界は、魔物と人間が共存している世界なのかもしれない。
「スライム君、君は何かしたい事はあるかな?」
「僕ですか? マスターに作られた存在ですしマスターのしたい事をしたい……ですかね?」
あ、そういうものなんだ。
ならまあ俺が魔王になるのを手伝って貰おうかな。
でもその前に、糞狼を狩らなければ。
それが終わったら、このままだと弱そうだしスライム君にレベル上げでもして貰おうかな。
このダンジョン守れるくらいには強くなって貰いたいし。
それに、ここら辺一体の魔物を狩り尽くせば俺の存在感も増えそうだ。
「よし、それならスライムくん、今から外で魔物狩りに行くよ! 俺という存在を知らしめてやるのだ!」
「僕はスライムですよ……? 大丈夫ですか?」
「心配無いって、俺も一緒にドッペルゲンガーとして戦ってあげるからさ。それに最初の敵は単なる狼だよ。」
あの狼くらい、俺も戦えば何とかなるだろう。
あっ、また影に戻った。
こっちはMPを消費するのか……
それにしてもMP切れするの早いな。
大体、21秒って所かな?
つまり一秒辺り10MPかな?
まあいいや。
少しは実体化も出来るようになったし、配下も獲得出来た。
この調子で、存在感を増やしていきたい所。
でも存在感か、どうやったら増やせるんだろ?
うーんと、魔王なら存在感はあるよね?
よし、魔王にでもなってみよう。影なら誰にも殺される事なんて無いだろうしね。
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