午前零時に私は冷や汁を作った

隅田 天美

料理の素人(一般人)が架空の料理を再現してみた実話 その3

『暑中見舞い申し上げます。

 暑さ厳しい折から、いかがお過ごしでしょうか、お見舞い申し上げます。

                               隅田 天美』 

 夏である。

 当たり前だが、暑い。

 ただし、尋常ではない暑さだ。

 三十五度越えは当たり前。

 外に出て日にあたると日光で皮膚が焼かれるのが分かる。

 食欲も失せる。

 うなぎやニンニク料理は精が付くといわれているが、すでに食べる気力がない。

 ほとんど、朝に無理やりご飯を詰め込んでいるのが現状だ。(お昼は普通に食べていますが、夕食は無理)

 そんな時、『剣客商売 包丁ごよみ(池波正太郎)』に「冷や汁」というものが出てきた。


 冷や汁。

 地域やご家庭などで味付けなどが様々だと思う。

 私の父型の祖母の家は、夏になると冷や汁をよく作っていた。

 焼いて骨や皮を取った白身魚と味噌をすり鉢で擦って粘りをだして薄く表面に塗る。

 それを火であぶり氷と冷水を入れてキュウリ、ミョウガ、シソを加え、表面の味噌を少しずつ溶かして炊き立てのご飯にかけて食べる。

 この料理、その祖母の家に行くと毎回出されていたが、実は私は食べられなかった。

 キュウリはともかく、ミョウガやシソが食べられないからだ。

 救済処置として私だけ白いご飯でおかずになまずの天ぷらを食べていた。

 鯰の天ぷらは脂が多いがさっぱりして美味しかった。

 その料理を作っていた祖母も十年以上前に他界した。


 話を本題に戻そう。

『剣客商売』の中でも冷や汁が出てくる。

 急ぐときに手軽に食べられるものとして登場する。

 工程もシンプルで乱暴に書けば、具のないみそ汁を冷やし、冷や飯にかけて完成である。

「これなら食べられるかも」

 そう思ったが午後九時である。

 例によって思いつきである。


 まずは、水を入れて昆布を入れる。

 そこから二時間は暇である。

 洗濯しようにも近所迷惑をもある。

 なので、師匠(原幌氏)とFacebookで東京に行く旨を伝えてホテルを予約した。

 午後十一時に昆布を煮だして鰹節……ではなく、「鯖、鰯、鰹の混合ブレンド」を入れた。

 そこから再び放置。

 本には「ちゃんと鰹節を削ってください」と書かれているのに……

 ともかく、金網でして出汁が出来た。

 そこに味噌(以前登場したコンビニの「だし入り味噌」)を溶いて入れて再度濾して冷蔵庫で冷やす。

 ご飯は土鍋で炊いて冷ます。(実は、一番心配した。腐敗するのが怖いから)

 寝たのは午前様だった。


 目が覚めたのは午前十時だ。

 今日も暑い。

 ご飯を器に盛り(腐敗していなかった)、そこに冷やした味噌汁をかける。

 固まったご飯を崩し食べてみた。

 率直な感想。

「ちゃんと再現したものなら美味しいのかも」

 不味いわけではない。

 ただ、出汁の生臭さが気になるのだ。

 前回の根深汁(葱の味噌汁)は葱という香味野菜が生臭さを消していたが、今回はそれがない。

 冷えているから余計に気になる。

 ご飯は上手にできた。


 鰹箱を買おう……

 それ以前に上手に削れない。


 池波先生の墓前で謝るのが増えるなぁ。

 という前に、もう少し計画を持って行動しようと思います。

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午前零時に私は冷や汁を作った 隅田 天美 @sumida-amami

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