小旅行

第1話

日本には、４７の都道府県がある。

その中で、海のない県は８つある。

他の７つの県は、どこかの隣接しているが、

どことも、隣接していない県が、一つだけある。

近畿地方の中央に、奈良という県があるが、

それが、その県である。

かつては、都のあった奈良だが、今ではないがしろにされる事も多い。

そんな奈良に住んでいる、男の物語。

「今日も疲れた」

男は大阪の会社に勤めている。

給料はさほど高くないが、休みも多く残業もない、

ホワイト企業と言える。

「たまには、贅沢するか」

男は大阪と奈良とを結ぶ、大手私鉄沿線に住んでいる。

かつては、プロ野球チームも、保有していた。

特急も走っているが、関西の私鉄では珍しく、特急料金を取られる。

その特急にたまにのるのが、男の楽しみだ。

大袈裟ではあるが・・・

自販機で、特急券を買う。

「奈良まで禁煙席と・・・」

出てきた特急券を見て思う。

「窓際だ」

しかし、夜なので、景色は良く見えない。

でも、嬉しいのは子供じみている。

この私鉄の特急は、旧型車と新型車の差が激しい。

旧型車だと、シートの改善はされてはいるが、やはり新型車よりは、劣る。

これで同じ値段は、詐欺だと、批判も多い。

それでも、通勤車よりは、いい。

自販機で紅茶を買う。

列車が入ってくる。

どうやら、当たりのようだ。

「さてと、駅に着くまで小旅行を楽しみますか」

列車は、終点までひた走る。