ミサンガガールズ

@magmag333

第1話 2年4組 恵比寿 広大の場合


「おい」

ふてぶてしい声だ。美沙子は振り向く。短く切り揃えた髪の毛先がパラパラと揺れる。


廊下で偉そうに立っていたのは坊主頭の男子だ。肌は褐色によく焼けており、見た瞬間野球部だと分かるような見た目である。


「なに」

偉そうに話しかけられてイラッとしたので、私も偉そうに返事をする。


坊主頭はイライラとしたように頭をかいた。まるでそんな態度をとられる覚えがないような反応だ。

「お前、高畑美沙子だよな?噂の」


なんの噂だ、そう思いつつ頷く。彼は幾分かほっとしたようにこちらに視線を合わせてきた。


「お前のミサンガが欲しいんだけど」

断られると思ってない、そんな表情と発言にイラッとした。こいつはなんでこんなに偉そうなんだ。


どう答えるのが正解なのか、迷いつつ。廊下の天井の時計を見ると、授業が始まるまであと30秒。

次の時間は理科だから、理科室に行かなきゃならない。そもそも急いで廊下を歩いている人に話しかけようと思うのか。


「そもそもあんた誰?」


「え?」

ぽかんとした顔を眺めて少しスカッとしてから、私は廊下を走り出す。「おいっ」という声が聞こえたが無視無視。

授業開始のチャイムが鳴った。



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