第2話
北の国の大氷原で橇をひいていた男の子や、南の国の海辺に寄り添い歩く恋人たち、西の国の砂漠でテントを張っている学術探検隊、東の国の草原に恋人の帰りを待ちながらたたずむ少女の物語。木の葉はいつも胸を躍らせながらその物語を聞き、それからどうなったの? と、風に話をせがみました。でも、風は一所にじっとしているわけにはいかなくて、すぐに、
「続きはまた今度ね」
と、言い残しては、行ってしまうのでした。
「ああ、ぼくも風と一緒に飛んでいけたらいいのに・・・」
何度となくそう願い、木の葉はため息をつきました。それが叶わぬ願いであることを木の葉は知っていたからです。虫たちが教えてくれました。木の葉が枝から離れる時は、もう、木の葉が死ぬ時なのだと・・・。
「風はいいなあ」
何度目かのため息をついたときに、リスが木に上がってきていて、木の葉の言葉を聞きました。リスは慰めるように言ってくれました。
「風は、あなたがうらやましいんですよ」
木の葉は驚いて聞き返しました。
「どうしてですか?」
「大地にしっかりとつながっているあなたたちと違って、風はいつも走っていなければならない。風には永遠に安住の地がないんですよ」
風が走るのをやめたら、風でなくなってしまうから・・・。
木の葉は思いました。
――僕は風がうらやましい。でも、風はぼくがうらやましいなんて。それじゃあ、本当に満足している人は、いったい、どこにいるのだろう?
遠い遠い空を木の葉は見つめました。青い青い空は何処までも広がっていて、見つめていると、いつか木の葉の心の中は、すっかり哀しみでいっぱいでした。いつまでもいつまでも、泣いていたいような気持ちでした。
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