第2話

 少年は、成長し育ての親の元で働きだした。

 少年は幾度も継父継母に反抗した。なぜ村人を見捨てたのかと。幾度も己の本当の出生を誰かに話して楽になってしまおうと考えた。

 しかし、時が経つにつれ、少年はそうする力さえ失っていた。

 人並みに働いて、人並みに妻をめとり、人並みに子を作り教育した。それでも彼の目は死んでいた。子が可愛いことが、憎たらしかった。

 青年になった彼は、酒を覚えた。


 継父継母が亡くなった。

 心を許すことなく、逝ってしまった。

 青年は酒に溺れた。

 酔った勢いで、絶対に開けてはならぬと言われていた棚を開けた。

 青年はそこで初めて知った。

 あの戦争は、村の上空を飛んだあの一機だけで終わった。

 ゴールドと名前が付けられた新型兵器、テルマは、敵国の領土の半分を荒野にした。

 爆発で多量の人間が即死し、生き残りの子には奇形が多く、土地には草も生えない。

 確かに青年の住む国は黄金のような輝かしい勝利を得ていた。


 当時の新聞が、沢山切りとられては保管されていた。

 時折乱雑な文字で、怒りを表す短い単語の羅列がある。

 なぜか!なぜあんな幼子からすべてを奪うか!

 継父の筆跡で殴り書きがなされている。

 青年は、嗚咽した。

 そして決意した。

「我が妻よ、我が子よ。私はこれよりお前たちとの縁を切る……」


 家族と縁を切ることを宣言したにも関わらず、妻や子の反応は薄かった。

 むしろ笑みを浮かべてすらいたかもしれない。稼ぎの割に酒を買いすぎ、家計は圧迫されていた。

 青年は新聞の切りとりだけを手に、家を出た。

 一切れの、セピア色に褪せた記事だった。

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