魔法使いより、剣士が好きです!【まほけん】
三城 谷
転生編
第1話「ここ、どこ?」
――自由が欲しい。
そんな事を思い始めたのは、幼少の頃だった。
『動きが固い!もっと前へ踏み込まないか!』
『これから作法の勉強もしますから、遊ぶ時間は後回しですよ』
両親から投げられる言葉は、全てが家の事情に左右されたものだったのだろう。一児しか産まれなかった事、それが私という女の子だったという事……家督を継がせる為にとはいえ、完全に縛られた世界へと放たれたのが私という子供である。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
数少ない息抜きといえば、唯一許可を得た武道や剣道を嗜む活動。その活動に必要な走り込みをする時間が、私にとって〈自由〉と呼べる時間だった。
『――さ、始めますよ。今日はテーブルマナーから』
「はい、お母様」
無機質に、無感情に、無関心に……言われた事に従う。それがあの家で過ごす為に必要な事で、私が生き残る為に必要不可欠な事だった。けれどそれは、私にとって大きな負担となっていたのだろう。
――気付けば私は、真っ暗な外の世界へと飛び出して居た。
数十年間耐えていたとはいえ、それでもやはり精神には来る
暗さから察するに深夜帯であり、勿論、擦れ違う人間も人影も無い。感じるのは喪失感だけで、
「寒い……どこか屋根のある所……」
適当に歩く事、数時間。やっと見つけた公園の中で、屋根付きのベンチがある場所を見つけた。やや汚い状態ではあるが、雨を防げる可能性を考えれば休憩するには丁度良いだろう。
それに歩き疲れたのか。異様に身体が重たいのもあり、私は座ると同時に
「……まぁ、いっか。幸せとは言えないし」
そんな一言だけ呟いた私は、やや汚いベンチの上で寝転がる。疲労感によって生まれた重さが、一気に
そして私は――
「ん~~~……ふわぁ~、眠い……」
ゴシゴシと瞼を擦り、私はキョロキョロと半覚醒状態のまま周囲を確認する。するとそこに広がっていたのは、公園などではなく、全く知らない場所なのであった。そして私は訳も分からない状態のまま、率直な感想を呟くしか無かった。
「――ここ、どこ?」
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