卒業
神籬 咲夜
プロローグ
拝啓
桜が咲きほころぼうとする今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。共に過ごした日々が今でも懐かしく思い出されます。
私たち六人は二週間後、三月十四日に卒業します。厚かましいとは思うのですが、私のお願いを聞いていただけないでしょうか。
◆◇
バレーコートサイズの体育館。教室との違いは天井の高さぐらい。いつも熱気にあふれ、みんなで走り回ったその部屋は、今日は全く違う顔つきをしている。厳かな空気に包まれ、申し訳程度のステージには大きな花束が飾られて、その横で校章の入った旗が揺れていた。
今日はこの学校最後の卒業式。生徒は卒業生六人だけの、少し寂しい卒業式だ。胸に花の飾りを付け、涙をうっすら浮かべて、別れの言葉を始める。
「卒業」
「今日の、この良き日に」
「私達は」
彼らは息を揃って吸った。とびきり大きく、少しだけ悲しさを交えて。
「卒業します」
目の水が反射したのか、照明がいつもより強く見えたような気がした。
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