本編
π=3
ある朝起きたら円周率が3だった。
ニュースで見たし、新聞にも載ってたから間違いない。
コップは六角形だったし、カーブはプレステ初期のポリゴンみたく粗い処理だった。
触ると“丸い”感触はあるのだけど、触るまでは六角に見える。
外に出ると六角タイヤが不自然にスムーズに転がって車が走っていた。
景色は抽象画というか手間暇か予算を大幅にカットしたCGみたいになっていた。
あらゆる丸みを帯びたデザインは死滅した。
全てのものが直線的で作りが簡単というか雑になっていた。
自分だけがこの世界に慣れていなくて、ほかの人たちは普通に過ごしていた。
そんな生活にもしばらくすれば慣れるもので、不便ながらも問題なく生活できるようになってきた。
そんなある朝起きたら円周率が3.14だった。
ニュースで見たし、新聞にも載ってたから間違いない。
コップは192角形(さすがに検索して調べた)だったし、あらゆる“円”と“球”が丸いということを視覚に訴えてきた。
触らなくても“丸い”という感触があるし、以前よりはましになった。
外に出ると見慣れてしまった六角タイヤはなく、よくよく注意してみなければ普通の感じである。
“球”ができの悪いゴルフボールみたいになっていたのはちょっとアレだが、今回の変化に慣れるのに時間が短くて済みそうだと思った。
このままうまくアップデート?が続いて世の中は段々丸くなると思っていた。
そうしたある朝起きたら円周率が4だった。
最悪極まりない。
完
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