逆異世界暮らし

ざわふみ

第1話 異世界暮らし

 ――バルーゲン。この世界の名称である。

 バルーゲンは魔法が使える世界である。人々は魔法を生活や戦闘に使いながら暮らしている。そして、魔物と呼ばれる生き物が住み着いている。


「今日はあいつを狩りに行くか」


 そう呟いたのは茶髪の男、カイルである。

 カイルは冒険者で一人で魔物を狩って暮らしている。


「あいつって言っても会ったことは無いんだけど。ラージタイガーってどんな奴だ?」


 カイルは広い草原から森に向かって歩いている。


「でかい虎なんだろうな」


 カイルがぶつぶつ呟きながら歩いていると、遠くで獣の鳴き声が聞こえてきた。


「多分ラージタイガーだな。近くなってきたな」


 カイルは森の中に入っていった。どんどん奥まで進んで行くと、いきなりカイルが立ち止まった。


 するとドスンドスンと、大きな獣か何かの足音が聞こえてきた。


「――ついに来たか。ラージタイガー」


 そして、森の奥からラージタイガーが姿を現した。オレンジのような色に黒い虎の模様があり、体長が3メートルと普通の虎よりも数倍大きい。爪と牙は鋭く、ラージタイガーが歩いた後は爪痕が付くほどである。


「うわっ、予想よりでかっ…いやビビっちゃだめだ」


 ラージタイガーは今にも襲いかかりそうで唸(うな)っている。


 カイルは腰から剣を抜き、戦闘態勢になった。そして、ラージタイガーに向かって走って行った。


「――やあっ」


 ラージタイガーの前足の爪と剣がぶつかりカイルは吹き飛んだ、まではいかず後ろに飛ばされた。カイルはすぐに態勢を立て直した。


「これはまずいな。いったん逃げながら作戦を考えるか」


 カイルはラージタイガーに背を向け走り出した。ラージタイガーも一瞬動きが止まったが、すぐにカイルを追いかけた。


 ラージタイガーはたまに木をなぎ倒しながらカイルを追いかけている。一方カイルはジグザグに走って逃げている。


「――くそっ、考える時間も与えてくれないのか」


 カイルは森の奥の方へとひたすら走り続けていた。ラージタイガーの音が少し遠くで聞こえる。


 どのくらい走っただろうか。もうラージタイガーの音もほとんど聞こえなくなっていた。

 そして行き止まりにたどり着いたとき、そこにあるはずのない物があった。

 

 古びた扉だった。


 その扉は行き止まりの岩の壁にぴったりくっ付いていた。ドアノブが何とかくっ付いている状態で今にも崩れそうだった。


「なんでこんな所に扉があるんだ?」


 カイルは壁から扉をはがそうとしたが全く動かなかった。


「扉が岩の壁にくっ付くかよ普通。開けてみるしかないけど怖いな」


 カイルが扉を開けるのを躊躇していると、ラージタイガーの音が少しずつ近づいてきていた。


「もう来たか。これは行くしかないな」

 カイルが古びた扉を開けると中は白く光っていた。


「これは入れるのか?」

 白く光る所にカイルが手を入れるとスゥーッと通り抜けた。


「転移系の魔法か。どこに行くか分からないけど行ってみるか」


 カイルはそう呟くと扉の白い所に消えていった。

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