玉座への道

僕は、エルザたちと別れ玉座に向か通路を歩き進んでいる。赤い絨毯の引き詰めた一本の道。そこを一歩一歩踏み占めるように歩いていると、足を踏み出す度に、今までの出来事が走馬灯のように思い出される。




奴隷商に売られそうになっていた時の、必死で僕を庇う姉上の姿。そして、そこに現れた馬に乗った兄上、「あの時の兄上、かっこよかったよなあ・・・」




レギオン爺さんに引き取られ、剣を教わり、その手ほどきや模擬戦など、いろんな事を兄上より教わった。その中でも政治や経済、そして、民への心配りなどは今も忘れない。


姉上は、人との接し方、思いやり。そして、なにより、人のやさしさを教わった。


「兄上も姉上も勉強と訓練には厳しかったなあ・・・本当に死ぬかと思った時もあったしね・・・」




兄上が姉上にプロポーズしたとき、お互い真っ赤な顔で、それでも騎士らしく姉上の前に跪いて告白する兄上、それを、モジモジしながら受け入れる姉上、その姿はとても綺麗で嬉しそうだった。


「そう言えば、僕はエルザやアリサにちゃんとプロポーズしたっけ・・・まあ、いいか・・・今更だよね。でも、これが終わったらちゃんとした方がいいかもね・・・」




そして、決断の時。全てを話して下さり、自分のなすことを告られた、あの時の兄上の厳しい表情。そして、姉上の寂しそうな笑顔。あの時の二人の顔は決して忘れる事はないだろう。


「そう言えば、あれが僕達の結婚式だったのかも・・・身内みんないたし・・・でもエルザにもアリサにもドレスって着せてあげたことなかったなあ・・・今度、着せてあげないとね」




そして、仮面舞踏会のことでの姉上からの文。優しさやいたわり、そして何よりも姉上の思いが込められた文であった。


「あの文で僕達一晩中泣いたっけ・・・でも、レギオン爺さんも刺繡入りロングコートは教えないで欲しかったよ・・・」




そんな事を思い出しているうちに、玉座の間の入り口に着いた。


正面の玉座には、二人の姿。




玉座に座った、国王アースロイド=ドラグーンと、その傍らに佇む、王妃フィリア=ドラグーンの姿であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る