役目の終わり
アースロイドが帰ってきた。白馬にまたがり威風堂々とした佇まいである。そして、その道沿いにひれ伏す多くの民。皆、恐怖に顔を引きつらせ、中には怒りの表情を見せる者もいる。
{・・・これで・・統一は・・なった。あとは・・・カインを待つだけ・・・もう少しだ・・もう少しの辛抱だ・・我が民よ・・・}その表情こそ変えないが心では只管に詫びるアースロイドである。そしてアースロイドの側を進むクラリスも同じ思いであったのは言うまでのない事である。
そして、凱旋でありながらも歓声の一つもない静かな王都へと入っていく国王軍であった。
城に帰り戦後処理を済ませるとアースロイドは一目散にフィリアの元に向かった。ドアの前で「フィリア。私だ。今・・帰った・・・」そう告げるとドアを開く。
中に入ると、フィリアが、これ以上ないほどの優しい笑顔で迎えてくれた。その笑顔に安心したのか急に体の力が抜け落ち倒れそうになる、それを見て慌てて駆け寄り抱きしめる形で支えるフィリア。そして。フィリアが囁く。「・・・おかえりなさい・・お疲れでしたね・・・」
「・・・フィリア・・・おわったよ・・・わたしの・・・役目は・・・お・わ・った・・・」そう言い残し意識を手放した。
フィリアの部屋のベットには全てを終え、眠りにつく夫、アースロイドと人に戻った優しい寝顔を見つめるフィリアの姿。
「・・・全て終わったのですね・・・」アースロイドの髪を撫でながら囁く。「もう間もなく魔王から人に・・・優しいアースロイド様に戻れるのですね・・・」そう言うと、一筋の涙が頬を流れ落ちた。
どれぐらい眠っていたのか、アースロイドが眼を覚ますと、もう日が暮れて星が輝いていた。
「よく、お眠りになっておられましたね・・」目覚めると、そこに愛する妻の優しい笑顔と温もりがあった。
「・・・ああっ・・人に戻れたようだ・・・」そう言って唇を重ね互いの温もりを確認し、求めあった。
翌朝。アースロイドは、クラリス夫婦とレギオン夫婦をフィリアの部屋に呼び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます