大聖堂燃える
大聖堂の周りには空腹を耐える信者が相変わらず取り囲み、その周りにアースロイドの指示通りに兵と魔術師が取り囲む、そのうちに黒い液体を撒きはじめ、あたり一面、油の匂いが立ち込めた。
「・・・・まさか・・」信者の顔が恐怖に青ざめていく。何を始めたのか理解し始めたのだ。
「・・・・やばいぞ・・・早く大聖堂に入るんだ・・・」
「だめだ・・・人が多すぎて・・・動け・・・ない・・・」
「早くどけよ=・・」「・・きゃ=・・・たすけて~・・・」
逃げ惑う信者をよそに、兵士たちは一歩下がる。「準備・・・終わりました」
アースロイドは、その報告を聞いて号令を飛ばす。「・・放て~!そして魔導士は風の魔法にて全てを燃やしつくせ!」
後方より何本もの火矢が放たれ油に引火し、魔術師が炎を煽って大きく広範囲に広げていく。
「うわああ~・・・・」「・・・焼ける~・・・あつい~・・」
「・・・たすけて・・くれ~・・」
「中にいれてくれ~・・・こどもが~・・こどもが焼け死んでしまう・・・」
狂気と混沌の中、逃げ惑う信者。だが、あまりの人数により逃げ場所がない。それでも大聖堂の扉を開けば何人かの命は救えただろう、だが、扉が開く事はなかった。
「・・大司教さま~、軍は信者に向けて火を放ち、大聖堂の周りは火の海でございます・・・」
その報告に、オーグは持っていたフォークを床に落としワナワナと震えでした。「何をしているのだ。すぐに扉を閉めて火が入らぬようにするのだ!」オーグの命に精霊騎士が「それでは信者たちが逃げられませぬ。扉を全て開放・・・」そういいかけるが「何を言っている!わたしが・・・わたしが生きておれば良いのだ・・・信者などいくらでも増やせる。はやく扉を閉めろ~」
その言葉に扉は開く事はなく、大聖堂の周りは、人の肉の焼ける匂いや衣類の焦げた香りでむせ返り、全てを燃やし尽くして黒い屍の山にするのに一晩中火の手が上がって夜の大聖堂を赤く染め上げるのであった。
その光景を目の当たりにして苦痛に顔を歪めるアースロイドの姿を知る者はいない。
この日一晩で何万という人が死んだのだった。
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