第75話 ドッペルゲンガー

さくさくさくっと教えてもらった。

ついでに術紙のことも。

サモームとかいう錬金術のおっさんが式神用に作った道具らしい。

仕組みはシャドウでも「知らん」と一蹴された。


なので、一枚借りて解析した。

少ないのであげられないとのこと。


ふむふむほおー?


これは面白い。

透かしを使って魔法陣を描いている。

爪楊枝に仏像彫る人並みにトチ狂ってるよ。


「…貴様も大概だけどな」

「えー?」


瞬時に構造を理解し、メモしながら設計図を描いていると、シャドウにそう言われた。

そんなことないよ。


「紙か。耐久性ってどんななの?」

「そこまでない。所詮は殿シンガリ用の囮だからな」

「なるほど」


じゃあ僕は其処んところを改造しよう。


「おい、さっきから気になってたがその丸太は何に使うんだ」

「ん?」


僕の隣に立て掛けてある丸太に視線を向けているシャドウ。


「ああ、これは木彫りを作ろうとおもって」

「木彫り…」

「せっかくだからこれ使ってみるか」

「?」


怪訝な顔しているシャドウを尻目に丸太を持つ。


太さは僕の両腕で囲んだくらい。高さは胸ほど。

呼びもいれて三体くらいのパーツは作れるかな。


ボンッと音を立てて丸太はバラバラに。

丸いのと細長いの、三角のに別れた。


芯は僕の髪でいいか。


プチプチと三本ほど切って、魔力を通して変化させる。

それをそれぞれのパーツの小さい穴に入り込んで、人形の完成。

完全にデッサン人形ですね、これ。


その人形をシャドウが驚いた様に見ている。


ふふん。僕は組織秘密なんてないからねー。

公開公開。


「えいや」


腕ほどの人形の胸元を軽く押すと、術式の魔法陣を添付。

水色に輝いた。

芯に僕の髪を使っているから、個人情報入力しなくても良し!

時短最高!


で、ついでにちょちょいのちょいっと。

はい完成。


「起動をしてください」


地面に置いた人形の1つがくくっと揺れ、大きくなりながら僕になった。

おおお。

変な感じ。


ドッペルゲンガーみたいな感じがして分身作る魔法とか毛嫌いしてたけど、そんなんでもなかったな。

むしろ面白い。


試しにアルプス一万尺をやってみた。

息ぴったり。


「あー」

「<あー>」


ん?ノイズ混じってる?


「らりるれろ」

「<らりるれろ>」


おかしいな。調整は完璧だったはずなのに。


「ど、どっちが本物だ?」


おや?

シャドウには見分けがついてないらしい。


分身と顔を見合わせ、手を繋いでぐるぐる回る。たまに反対回り。


「<どっちが本物でしょーか?>」


むむむ、と双方を睨み付け。

ふう、と突然息を吐いた。

下らないと吐き捨てられた。

見分けがつかなかったらしい。


「ノイズとかは聞こえますか?」

「…いや」


どうやらこのノイズは僕にしか聞こえていないっぽい。


「もとに戻れる?」


人形に訊ねてみたら、頷いた後にブッシュウウと空気が抜けるようにして小さな人形に戻った。

わお、便利。


あとで色々仕込んでみよう。

多分魔法を使うのは無理でも、盾には使えるかもしれないし。


その後、シャドウに言われた効果のビーズ作品を作り上げた。

ブレスレットと、腰布に着けるタイプだ。

分身の方の出来がすごく良かったので、魔法石もおまけのつもりでこっそり付けた。


色も目立たないがお洒落な感じにしたので、大っぴらに表情に出さなくても喜んでいるらしく、翌日から身に付けている姿が目撃された。


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