第68話 空帝

ゲートはちゃんと測定してから創れとマジリックに怒られた。


うん、記憶にあるゴルダとか姫様用に作っちゃってたからね。失敗失敗。

今度は煌竜様の最大サイズの方の測定をして、それを基準に作ろう。


というわけで、晴れて空飛ぶ森とドラゴンの国が繋がったわけです。


凄いね。完全にハブ空港だよこれ。


「とりあえずは、これでいつでもマリちゃんを避難させられる」


マジリックに内密に、また魔王と衝突するかもしれないことを報告しておいた。

前回は何とかなったけど、次も何とかなる確信が持てない。

ならば、先に戦えない子達を逃がす道を作っておくべきだ。

幸いにも煌竜の王様。あ、姫様のお父さんね、にはもう許可を貰っていたから。


本当に心が広い方々だよ。


感謝感謝大感謝。


壁の上に乗って、国を見下ろす。


ルルル…と、アヴァロンが鳴いている。

人型のアヴァロンは分体だ。記憶は繋がっていてもそれぞれ今考えていることは違う。


「風はどんな感じだい?」


そう言えば教えてくれる。

言葉ではなく、五感全てで。

風の冷たさ。火の暖かさ。風の柔らかさ(湿度)に、香り。


おや?これは何の香りだったか。


爽やかで、甘くて、安心する匂い。


ああ、そうだこれは三人で遊んだ谷に満ちていた花の香りだ。白くて可愛い花が谷一杯に広がっている。


その場に座って、魔力で記憶にあるその花を作り出す。


「なーんでこんなつまらない戦争なんかするんだろうな」


いや、両者とも理由はなんとなーーーく分かるんだけど。


「…でもそれって、正直僕関係なくない??」


飛んだとばっちりと思うんですけど。

理不尽じゃない?理不尽だよね。


「あーあ、みんな武器じゃなくて、花束か枕でももって戦えば良いのに。そうしたらみんな死ななくて安全なのになぁー!!」


現在ではオリン●ックという仮想戦争みたいなので交流を図りウンヌンカンヌンとかそんな感じのイベントがある訳なんですが…。


花を指でクルクル回す。


…………?

??


まって、なんか今凄いアイデアが浮かんだ気がする。


「お師匠ー!!」

「!」


マリちゃんだ。


目を向けると、アヴァロンに抱えられて飛んできていた。

お揃いワンピースか。可愛いね!


ふわりと隣に降り立つマリちゃん。


「どうしたの?」

「面白いの見付けたんです!一緒に街に行きませんか?」


面白いの?なんだろう。


「いいよ、行こうか」













リウの姿になって街に来た。

マリちゃんに手を引かれて早足で行く。


手首に填まるビーズが魔法を纏ってキラキラ輝いている。

ビーズなのに、宝石に見える。

今度は木彫りで何か作って売るってのも有りかな。


「あった。これですよ、これ」


これ?


マリちゃんが指差すのはいつもの掲示板だ。

更にボロボロになって跡形もなくなった手配書の上に、新しい紙が張られている。


新聞である。


「…………空帝?」

「そうです!ついに新しい称号が付きました」


いわく、空に城を持つ皇帝のごとき存在になったから、空の皇帝、略して空帝という呼び名が広がっているのだという。


おいおい、なに勝手に付けてるんだよ(笑)


しかも空帝の森の観測スポット情報なんか載せなくて良いから、狙撃されちゃうでしょ(笑)


なんかもうツッコミ満載の記事が面白くて、魔法でコピーした。

後でみんなにも見せよう。


「お師匠ついに王様ですね」

「嬉しくはないなぁ」


面白くはあるけども。


「!」


なんだこの記事。


左下の目立たない所に変なモヤの掛かっているモノがある。

見たところ、魔法が掛かっている。しかも洗脳型。


こんな公共の場によくないよこういうのは。


ということで解除した。


とたんにモヤが消え、代わりに違う新聞が出てきた。


── 武器の性能がデモナス氏の援助により著しく向上!!一月以内に大量生産が可能に!!


「デモナス……、あ」


頭の中に現れた魔王城勤務の悪魔が浮かんだ。

これもしかして、最悪の事態かも。


「お師匠??どうしました??」

「マリちゃん、ちょっと手伝ってくれるかい?」

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