第56話 両国の敵なんですって
街に来た。リウとして。
「おー、やっぱり治安よくなってる」
軍人がいなくなって、この前の荒れた雰囲気が和らいでいる。
みんな纏めて移動させて良かったぁ。
あの後みんなあの街に収納したあと、新しく軍隊が送られても入れないように惑わしの魔法を道にかけておいたし。ああ、快適。
山を見るとなんの変哲もないように見えるが、眼を切り替えると、普通の景色の少し下の方に全く同じ山がダブって見え、黒い壁がいくつもそびえ立っている。
魔王軍はあの下の方の空間で迷っていた。
リアルな迷路空間にしてたから脱出に手間取り、ここに来る抜け道を探していたが見つけられず。諦めて近くの戦地まで向かっていったのを確認した。
そろそろ戻しても良いんだけど。
僕の負担もまだ続いているし。
「万が一の事があるからなぁー」
僕の技の裏を突いてくるくらいだ。警戒はしておくべき。
それはそれとして、なんで僕が街にいるかと言うと。
「あったあった」
掲示板を見るためである。
この国は珍しくも国民の70%が文字を読むことができる。
故にこうして国内の情報が張り出されている。
僕の指名手配の紙は貼ってある。なんでかボロボロだけど。
顔のイラストの所は無傷なのに、金額とか指名手配の所がむしられてる。なんで?
で、現在の戦況も記載されてる。
自国有利の勝ち気な口調だけど、詳細はちゃんと載せられていた。
現在の戦地はやはりコザ平原。
だいたいこの街周辺が戦地になってたから、変更になってホッとしている。
後は兵士募集とか、物流関係の貼り紙がベタベタと密集して貼られ。
「!」
隅っこの方に、《ウィル・ザートソンは国家の敵、今や魔界と同じである》という紙がぶら下がっていた。
「僕は両国の敵なんですって」
かっこわらい。
『でしょうね』
と、メナード。
「お師匠からはなんもしてないのに」
可哀想と付け加えながらパンを齧るマリちゃん。
「ねー。僕は参加しませんって宣言してただけなのに」
『刺客を蹴散らしたり』
「そこは、ほら。ブンブン飛んでたら払わないと」
最低限の権利だと思う。
『で?こっからどうするんだ?』
『僕ら今んところ凄い暇になってますけど』
休憩中のグロウとロックが言う。
森が空飛んだことで見張りの仕事が激減し、今じゃ一部隊稼働で事足りてしまう。
「強化訓練とかする?」
『なるほど』
『やってみますかね』
お皿のものを掻き込んで、片付けるや武器を手に行ってしまった。
ほどほどにね。
「マリちゃんはどうする?」
「私はクーちゃんと、あとリンリンに用事があるので」
お、まさかのルーンコンビ。
魔術開発でもするのかな?
「ルーン魔術覚えると妖精とかの相性が劇的に上がるし、良いかもしれないね」
「ほんとですか!?絶対に私の授業受けた方がお師匠の為にもなるし良いって言われたんです!そっかー、よかったー」
「あの二人なら原始のルーンも知っているはずだから、僕の知らない魔法も会得できるかもね」
ルーンはなかなか難しくて、覚えきれなくて、結局オリジナルの魔術を開発してしまったから。
「頑張ってね」
「はい!」
手のひらにあるのはキラキラと輝く欠片。
そう、僕の心臓に突き刺さってたあれです。
目の前にはリンゴの木。
「さてと、やっちゃいますか!」
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