第38話 大掃除

「ごちそうさまでした」

『ごちそうさまでした』


各々皿を片付ける。


今日はなんとマリちゃん手作りのサンドイッチだった。

素晴らしい美味しさ。

お店出せるよこれ。


『マリちゃん!こんどいっしょにパンケーキ作ろう!』

『はちみついっぱいなの!』

「いいよ。生クリームもたくさん付けようね」

『生クリーム!』

『生クリーム!!』


大福とわたあめもマリちゃんにすっかり懐いているし、いい感じ。

むしろ仲良すぎて嫉妬しちゃう。


「んーっ、いい天気だなぁ」


今日はどうしようか、マリちゃんの修行を見てから街にマリちゃんと買い物にいこうかな。



『…壁の外のどうする?』

『一応ウィル様に聞いてみた方がいいと思うけど…』

『…でもあれだぞ?こっそり俺達でやるか?』


「!」


見張りのグロウとヒウロの会話が聞こえてきた。

なんだろう。


「どうしたの?」

『ひぉええ!!??』

『…ッ!!?』


グロウビックリしすぎじゃない?

なにその悲鳴。笑う。

ヒウロも固まってるし。仲悪いのに仲良いな。


「なになにー?そんな窓の外に二人して座り込んでー。内緒話ー??」


そんな二人をニヤニヤしながら見てやる。


そういえば僕もあっちで学生やってたとき同じ事してたな。

懐かしい。


『言うか』

『そうだな』


『『実は……』』













崖下に群がる暗殺者達の行き倒れ。


凄まじい努力の痕跡があるけど、それでも登れなかったらしい。

うーん、こうしてみるとシャドウの能力の高さが凄いってのが分かるね。


『まだ死者はおりませんが、このまま居続けられても迷惑です』


冷めた顔のグロウ。


『既に壁の外の生態系の影響が出ており、あちこちから苦情が届いてます』


ゲンナリ顔のヒウロ。

二人は小鳥の声が聞こえるからキツいよね。

小鳥は森の事を教えてくれる情報屋だけど、こういった苦情なんかも届けてくれる。

しかもオブラートという概念がないので色々むき出し。

僕がヒウロの立場だったら泣いてたかも。


「しょーがないなぁー」


部屋着から動きやすい服へとチェンジ。ついでに髪もポニーテールで一纏め。


「僕があれの片付けしてくるから、森の住人達に報告お願いね」


ちゃちゃっと終わらせよう。


『かしこまりました』

『気を付けて』

「うん」


一歩足を踏み出し落下する。

視界は一回転。

地面を確認するや華麗に着地した。


ふ…。この前のシャドウみたいにかっこよくできたんじゃないかな?


「………ッッ、ウィ、ウィル・ザートソンだ!!!!」

「やれええええええ!!!!」


















あれ?と首を捻った。

お師匠がいない。

街にお出掛けかしら。


「あれぇー?」


扉の前のノートに外出サインがない。

ということはこの森にいるということ。


「修行を見てもらうはずだったのに」


急用ができたのかしら。

仕方がない。自主練習していよう。


『ウィルがせんとう♪』

『ウィルがせんとう♪』

『見にいこう♪』

『そうしよう♪』


大福とわたあめがスキップしながら玄関に向かっている。

せんとう?銭湯?戦闘!?


「お師匠が戦闘!?」


いつもはグロウさんかヒウロさん。たまにロックさんが侵入者を排除しているのに、お師匠が戦っているって相当じゃない!?緊急事態!!


「大福ちゃん!わたあめちゃん!」

『お?』

『マリちゃん、どーしたの?』


それなのに何事もないどころか無邪気な笑顔のお二方。

緊急事態なのに!

何ができるかわからないけどお助けしないと!!


「私もお師匠の所に連れていって!」






ということでわたあめに包まれ大福に飛んで貰って来たのだが。


「????」


壁の上に使い魔や精霊達が集まって下を見ていた。

加勢すればいいのに。

禁止されているの?


『嬢ちゃんも来たか。ほら、見てみろ。ウィル様が楽しそうに遊んでいる』

「遊んでる?」


どういう事だろう。戦闘と聞いたのに。


恐る恐る下を見れば、お師匠は踊るようにして敵の攻撃を回避し、次々に気絶させていっていた。

その様子はあまりにも軽やかで、本当に遊んでいるみたいだ。


『今ウィル様は暗殺者達に力の差を見せつけるために敢えて魔法無しで戦っているのです』


と、ロックさん。


「どういう事?」

『魔法が取り柄の魔法使いなのに、あえて拳で叩きのめす事によって連中のプライドをへし折っているのです。マリさんも、普通魔法を使うことのできない格闘家に魔法で負けたら軽くトラウマになりません?』


想像してみた。

かなり悔しいし自信がなくなる。


「キツイですね」

『でしょ?ウィル様はできる限り殺生したくないみたいだし、あ、終わりましたね』

「ほんとだ」


アチョーと言いながらお師匠の飛び蹴りによって敵が沈んだ。


今さらになって敵を数えてみたら56人いた。

お師匠強い。


「みんなまとめて強制送そうかーん!」


光に包まれて敵が消えていった。

凄いなぁ、お師匠は。

兄さんも凄いけど、なんだろう、次元が違うっていうの?


「がんばろ」


最終目的がどんなに遠くても頑張らなくちゃ。



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