第28話 カッパッパ
最近雨が多い。
ウィンデーネや水龍や人魚たちは嬉しいらしくルンルンと鼻唄を歌っているが、雨が苦手な大福やわたあめがブスッと不貞腐れている。
『あめ嫌い』
『ぬれるの嫌い』
猫は濡れるのがいやらしい。
理由は確か毛の油が少ないから濡れると全部くっつくからだった気がする。
人間でいうと、たくさん着込んでいる状態で水で全部濡らされた感じかな?
「絵本読んでたらいいじゃない」
『あきた』
『歩きまわりたい』
「うーん…(笑)」
絵本のバリエーションも少ないしねぇ。
こりゃあ今度町にいくときに絵本も調達してこないといけない。
せっかく人間の文字を覚えようとしてくれているんだ。
できるだけ楽しみながら覚えてもらいたい。
『ねぇ…ぼっちゃん』
「ん?なんだいクー」
服を引っ張ってるクー。
青い髪の毛が湿気でくるくると癖毛になってる。可愛い。
『可愛いカッパ、作って…』
と、可愛いカッパのイラストを見せてきた。
あらやだ可愛い。
頭の中にこのカッパを来て雨の中を歩く三人が浮かび上がってきてやる気スイッチが入った。
「ちょっと待っててね」
クーからイメージイラストを頂くと、僕の作業場へと直行。
竜の脱け殻、この前買った布、皆の生え変わりの毛や羽を用いてミシンを全力稼働。
魔法も練り込みながら手が動くままに作り続け、ほんの一時間で三着の可愛いカッパが出来上がった。
「え、まってこれヤバくない?最高に可愛いんですけど」
クーちゃんデザインのセンスありすぎでしょ!?
これは今後服作るときはクーと相談しながらやった方がいいかもしれない…っ!
「大福ー!わたあめー!クーちゃーん!ちょっとこっちおいでー!」
三人を呼び寄せ着せてみると、どこのお嬢様ですか?って感じになった。
信じられるかい?カッパなんだぜ、これ。
ヤバイ。あまりにも可愛すぎて息切れしそう。
『ウィルどう?』
『かわいいー!!』
鼻血出そう。
それを我慢して可愛い可愛い連呼しながら頭を撫でる。
めっちゃ可愛い。
『ぼっちゃん…、どう、ですか?』
語彙力急低下。
萌え死ぬ。
こいつら自分の可愛さを一番発揮できる角度を解ってやがる。
「メナード。カメラ」
『御座いません』
「一番はじめに作ればよかった。失敗。いいさ今回は僕の頭の中に焼き付けるから」
こうなったら使い魔全員分のカッパを作りたい。
あ、素材が不足してるや。補充しなきゃ。
『これ濡れないの?』
布がいつもと違うことに気が付いたわたあめ。
「全部弾くよ」
『ほんと!!?お外で遊べるね!大福!』
『ね!わたあめ!』
二人手を繋いでピョンピョン跳び跳ねている。
くっそかわいい。
『森のそとの子にも見せてきていい?』
『ダイオーカエルと友達になったの』
大王カエルと友達…。
よくあんな口しかない巨大カエルと友達になれたなと感心したが、わたあめが魔物化したら身長ほぼ一緒だった。なるほど。
『クーが付いていく、から…』
お願いと懇願してくるクーと二人。
そんな顔されたら聞かないわけにはいかないでしょう。
『?』
三人の手におまじないを施す。
『これなーに?』
と、わたあめ。
大福は魔力の臭いを嗅いでいる。
「お守り。何かあったらこれで僕を呼べるからね」
『わかったー!』
いってきます!と、三人可愛いカッパと蓮の葉の傘をさして出掛けていった。
雨の中でも楽しそうな二人に作ってよかったとホワホワした。
よーし!残りの皆のも今ある素材で作れるだけ作ろう!
あ、ウィンデーネにもなんか作ろうかな。カッパはいらないだろうから、ストールとかどうだろう。
ポコポコと沸き上がってくるアイデアを纏めながら道具を取り出していると、突然脳内に三人の名前が浮き上がった。
え!?もう問題発生!?
すべての道具を投げ出して三人のおまじない目掛けてテレポート。
「なになにどうしたの!!??」
テレポートして最初に見たのは、ビショビショの三人と、気を失った一人の少女だった。
「…え?もしかしてこの子…」
見覚えのあるその顔に、急いで抱き上げると三人を連れて家にテレポートした。
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