第22話 ロックの悩み
森の真ん中の見張り台。
更に上の方にある枝にロックが腰かけてため息を吐いていた。
ブラブラと足を揺らしながら、この楽園の森を眺めている。
見栄を張って、人型の時に体を小さくしているのだが翼は限度がある。どんなに小さくしても身長程より小さくはなれない。
本体が魔力を解放して翼を広げるとこの森を覆える程もあるんだ。普段は頑張って小さくして五メートルくらい。でかい。自分で言うのもなんだけど邪魔だ。だから人型になってる。
『ロックー!』
『みつけたー!』
大福とわたあめがやって来た。
今日は大福が猫型、わたあめが人型だ。
いいなぁ、これくらい小さかったら良かったのに。
『どうしたの?』
わたあめが鞄を漁る。すると歪な形の飴を取り出した。
『あげる』
『作ったの』
手作りらしい。
『ありがとう』
じゃーねと二人はパタパタと飛んでいった。
いいなぁ。
「僕の娘はやらん!」
『うわああ!!?』
突然ウィル様が下から現れたからビックリして落ちそうになった。
「あ、でもロックくんは僕の息子だからこの台詞は使えないなぁ」
『ウィル様びっくりしましたよ!』
「ごめんごめん」
よっ!と言いながらウィル様がとなりに腰掛けた。
「悩みごと?」
『え?』
「ため息吐いてた」
みみみみみ見られていた…っ!!
『い…いつから見てらっしゃいました?』
「大福とわたあめ来る前のため息辺りから。壁際にアトラクション設置した帰りだったんだよね」
ほら、と、ウィル様が指差す先には先日のトンネルコースがグレードアップ。
「よくよく考えてみたら遊園地みたいなの無かったじゃん。だから丁度良かったかなって」
『お疲れ様です』
常に働きたくないとぼやいているウィル様だけど、こういう事では異様にフットワークが軽い。そしてよく働く。
「で?何でため息吐いてたの?なんか悩みごと?」
『えーと、ですね…』
言ってみた方が良いだろうか?
『僕、魔物体だと大きいじゃないですか』
「ふむふむ」
『邪魔じゃありません?』
「なんで?」
こてんと頭を傾けたウィル様。
『だって、確かに早さはありますけど、他にも早くて素早い方はたくさんおりますし、何より僕は小回りが効かないし…』
あ、凄い落ち込む。
それにウィル様がうーむと考えると立ち上がった。
「次の見張り担当クーちゃんだよね」
『はい』
「じゃあさ、交代したら、僕とお散歩にいこう」
『え、わかりました』
ウィル様とお散歩か。何処にいくのだろう。
じゃあ後でねと、ウィル様が家に帰っていった。
何処にいくのか分からないけど、久しぶりに二人でお散歩にいくのは楽しみです。
『ウィル様とデート…?』
『みたいです』
『いいなぁ。私も今度誘ってみよう…』
クーと見張りを交代し、ウィル様の元へと向かう。
するとお出掛け用の服に着替えていた。
あれ?
森の中を散歩するだけなら普段着で良いのに。
「さ!壁の上に行こう」
壁?
もしかして街に買い物にいくのだろうか。
壁の上に辿り着く。だが、いつもの方向ではない。
「ロック、じゃあ散歩するために魔物体になってちょうだい」
『え、でもそれでは…』
町まで五分も掛からない。
「久しぶりに世界旅行しようか。僕を背中に乗せてくれるかな?」
『……!!』
ということは、僕が本気で飛んでもいいと言う合図。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
すぐに魔物体となると、ぐぐんと視界が広く高くなる。
「よいしょ」
ウィル様が背中に乗り、羽毛の中で座る。
『用意はいいですか?』
「うん。いいよ」
『行きますよ!』
翼を大きく広げ、立ち上がる。
そして強く羽ばたいて空へと飛び上がった。
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