第3話 決闘を申し込まれました
こんにちは。
ウィル・ザートソンです。
僕は今薬草を調合して回復薬を作っています。
あ、僕のじゃないですよ?
これは売る様です。
昔、っていうか生前子供の頃薬草作りの遊びにハマってて、結構ゴリゴリするの好きだったんだよね。で、転生して、家に何故か薬の調合の本があって、子供のお遊びで真似事したんだよ。
薬草の図鑑を持って、そこら辺彷徨いて似ている草むしって。
幸運値EXって怖いね。
僕のむしった草全部本物で、しかもただの遊びだったのに凄い効能の回復薬できちゃったんだよ。
盗んだと思われたら嫌だから隠したけど。
誰が五歳児が草調合すると思う?
僕が親だったら信じられないよ。まぁ、だから隠したんだけど。
「最後に魔力を一粒っと」
スポイトで、僕の魔力を液体に変換したものを吸って、1滴落とす。すると僕の髪と同じ水色になり、完成。
全部で20本。
効能は高品質。
『ウィルー!町にいくの?』
『どこの町?』
人型になった使い魔の大福とわたあめがやって来る。
猫耳少女。良い。
獣姿だと吃驚するくらいの体格差があるけれど、人型になるとあら不思議。双子かなと思うくらい背丈が同じになっておててを繋いでやって来る。
「いつものところだよ。お土産買ってくるから、みんなと此処を守っててくれるかい?」
『うん!』
『いいよ!』
「グロウと喧嘩しちゃダメだからね」
『『 はーい! 』』
キャッキャッしながら駆けていく。
今度ワンピースを新調してあげよう。
『忘れ物は?』
「大丈夫」
『では、お気をつけて』
「うん。すぐに帰ってくるね」
メナードを初め、気紛れに『気を付けて』と使い魔達が見送ってくれた。
玄関の鏡に魔力を入れてから、結界の方へと歩いていく。
「さてと」
結界を抜けたら爪先立ちでトントンと踵同士を2回打ち付ける。
するとフワリと体が浮かんで準備オーケー。
結界を外側からロックを掛けると、風にのって空へと飛んでいった。
上空から森を見渡して、結界を調べてみる。
森を鳥かごのような結界が覆っている。
何処も解れている様子はない。とするなら、なんで居場所がばれたんだろう?
「せっかくこの地形気に入ってたのにな。また変えなきゃなぁ」
勿体ない。
かといって周りの生態系を僕の都合だけで変えないといけないのも可哀想だし。うーん。悩む。
「取り敢えず先に用事済ませてから考えよう」
目眩ましの魔法霧を発生させてから、町へと向かった。
山を三つ越えた先に町の姿を捉えた。
「ちゃんと通行許可書持った、と。これもいつまで使えるのやら…。よし!」
テレポーテーション。
光が体を包み、狙いを定めた場所へと一瞬で転移する。
転移した先は町近くの森。
いくら大魔術師でも、不法侵入はいけない。
お出掛け用の服が何処もおかしくないのを確認してから、門へと向かった。
「こんにちわー」
門番さんにご挨拶。
すると、門番は僕を見るなり気を付けをする。
「今日もお仕事お疲れ様です。お薬を売りに来ました」
「はっ!確認いたしました!どうぞお気をつけて!!」
「それでは」
軽く会釈をして中に入る。
毎度毎度仕事熱心で感心するな。
今度来るときお菓子でも持ってきてあげよう。
ホワホワと花を散らしているような大魔術師の背中を門番達が見送る。
無邪気な顔、女よりもふわふわしているその存在を見て、誰が世界最強なんて思うか。
だが、数年前のあの魔法大会であの大魔術師はデコピン一つで優勝した化け物だ。デコピンだぞ?親が躾で子供にやるようなデコピンで、今まで最強と謳われていた前魔法使いは敗北した。
「ああいうのを天才っていうんだろうな」
「だろうな。生まれが魔法使いの家系じゃないのに世界最強になるなんて、ほんと頭が下がるぜ」
お馴染みの道具屋へとやって来た。
相変わらず薬草が吊るされている。
安心する臭いだなぁ。
「おばあちゃん。ウィルが来たよ」
扉を開けるとカラカラと鈴が鳴る。
それを聞いたおばあちゃんがカウンターから顔を出した。
「あいあいあいあいあいあいあいあい。ウィルちゃん久しぶりだねぇ」
「おばあちゃん腰治った?」
「ウィルちゃんのお薬で一発だよぉ!見てみて!色つきが生えてきた」
と、道具屋のおばあちゃんが、白髪から一本色がついてる髪を指差した。
「ほんとだ、吉兆だね」
「だねぇ」
ウフフフフフとおばあちゃんがしわしわの顔をくしゃりとして笑う。可愛い。
「おばーちゃん。取引のお仕事しないと」
「あら、忘れてた」
流れでおばあちゃんの淹れたレモンティーを一緒に飲んでいると、おばあちゃんのお孫さんであるノジコさんがやって来た。
倉庫の整理をしてたらしい。
「今日はなにかい?」
「今日は回復薬を作ってきた。はい、これ」
コトンコトンと袖口から回復薬を20個出した。
「…いつも思うけどあんたの服の構造が気になるわ」
と、ノジコさん。
「企業秘密ということでー」
楽に秘密を明かしたら楽しくないもんね。
「36万ギールかね」
「え!?いいの!?20万ギールじゃないの??」
「これから戦争が始まるって言うんで、軒並み値上がりしとるんよ。質が良いからこれくらいでトントン」
「あー、把握…」
少しでもお金がほしい僕にとっては良いことだけどね。
戦争の恩恵ってやつだな。
「じゃあ、せっかくだからなんかお土産買っていくね。この布とこの布下さい」
「服作るの?女の子っぽくない?」
「使い魔の子達用の。ワンピース作ろうと思って」
「今度連れてきなさいよ、可愛く作ってくれる仕立屋紹介するわ」
「楽しみにしてます」
一応本人達に話して、行きたがったら連れてこよう。
お金を受け取り店を出る。
あとはお菓子を買っておしまい。
「おい!!そこの水色!!ウィル・ザートソンだな!!」
何が良いかな。
「無視するな!!」
「ん?」
あまりにもしつこいので視線を向けると、いかにも正当な魔法使いですって格好の連中が僕を杖で指差していた。
失礼な人だな。
初対面の人に向かっていきなり凶器向けてるなんて。
「大魔術師!!世界一位の称号を掛けて決闘を申し込む!!」
うわぁ、挑戦者久しぶりに見た。
「えー、めんどくさい。お断りしま──」
言い切る前に複数の魔法弾が発射された。
炎と水と雷か。
魔法は当たる前に方向転換して、空へと飛んでいく。そして、三つの魔法が互いにぶつかって爆発し、消滅した。
危ないなぁ。
魔法使い達は突然方向を変えた魔法に驚きの顔のまま固まっている。けど、叱るときは叱らないと。
「町のなかで決闘を申し込むなんて非常識だし、しかも魔法放つなんてバカなんじゃないですか?」
「…っ!!」
顔を真っ赤にしてる。
めんどくさいけど、こういう奴は口では効かないからな。仕方ないか。
「はいはい、分かりました。決闘を受けますから、まずは町を出てからです」
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